nuri candle

キャンドル作家

1978年福岡県生まれ。自然から受けるインスピレーションを蝋燭に込めるように制作するキャンドル作家。『鉱物キャンドルのつくりかた』など著書多数。

キャンドルに彩を灯して

6作ることは生きること

気持ちのメンテナンス

photo by フルタヨウスケ

フリーランスで仕事をするということは自分で仕事を作っていかなくてはいけません。焦ったり、不安になったり、いろいろと気持ちのメンテナンスも大変です。焦る時に来た仕事=あまり気分が乗らない仕事 を受けてしまった時の後からやってくる後悔は大変です。

「なんで受けてしまったんだろう」と悶々と自問自答しながら作るキャンドルはいいものではありません。気持ちが乗らない仕事はいくら仕事とはいえやるべきではないと、最近はお断りすることも多くなりました。こうやってここに書くことでさえドキドキしますし、勇気がいります。でも、いろいろ経験してみて作りたいものを作っている時のキャンドルはとてもいいなぁと思うのです。

夜明けのコーヒーと海と朝日

幸い、私は作ることがとても好きなようでずっと作っていられます。

とても忙しい時期になってくると、感覚が研ぎ澄まされてくることがあります。夜は早く9時頃に就寝して夜中1時や2時に起きて絵付け作業を開始します。しんと静まり返った部屋で指先にだけ集中していると、幸せな感覚に包まれることがあって、でもいつもではないのでとても集中できた時なのかなと思います。

夜明けの時間に水筒にコーヒーを入れて裏の海まで日の出を見に行きます。ひとしきり朝日を浴びて松林を歩いて帰ってきます。その後また作業に没頭します。自然の中を歩いているとふと思いつくことがたくさんあって、家に帰って慌てて書き留めたりします。

火を灯した時に魔法がかかるように

仕事への向き合い方をよく考えます。どういう気持ちで作るか、どういう場所で作るか、何を作りたいのか、そしてどうしたら幸せか。これを全部自分で選ぶことができるとしたら。今まではがんばる自分が好きでがんばればなんとかなるのかな、と焦ったりしながら作って今感じる気持ちを全部無視していました。

でもそうじゃないのかもしれない、今私がいい気持ちじゃないといいキャンドルは作れない。使ってくれる人に対して失礼なことをしている!それに気がついてからは今までの作り方を全部変えていくことにしたのです。今感じる気持ちを大事にしよう、今作りたいものを優先しよう、とどんどん気持ちの純度を上げていく訓練です。

いつも気持ちをまっさらにして作業台に向かうこと。プリミティブに、なにかいいものを込められるように、火を灯した時に魔法がかかるように。そしてキャンドルを手にした人が幸せになるように。

作ることで私自身も生かされているのだと思います。実際に今は毎日がとても幸せで充実しています。これからもいいものを込めていけるように日々を整えていきたいと思います。

連載もこれでおしまいです。6ヶ月間ありがとうございました。

キャンドルに彩を灯して

1

8月29日公開

福岡に帰ってきた

京都、そして地元の福岡へと活動の拠点を移しながら、自然をモチーフにしたキャンドルを作るnuri candle。どこか懐かしく、でも見たことがないような新しいスタイルのキャンドルはどのように生み出されているのでしょうか?注目を集めるキャンドル作家の魅力に迫ります。

2

9月26日公開

京都で過ごした時間

父親の転勤を機に引っ越した京都。四季折々の美しい自然や文化に触れながら、生きていることの実感と自己表現に対する葛藤のあいだでひたすらキャンドルを作り続けた日々は、充実した創作活動の時期となりました。

3

10月31日公開

もみじ市という魔法

求められるものを作らなくてはいけないというプレッシャーから解放してくれたのは、多摩川の河川敷で開催される「もみじ市」への出店の誘いでした。一ヶ月前から準備を始め、集中して自分の作りたいものを作る時間は、nuri candleにとって何よりのギフトとなりました。

4

11月28日公開

鉱物キャンドル

古くなった蝋燭を砕いてみると、結晶化した欠片が鉱物のように見えた…。そんなきっかけで繋がったキャンドルと鉱物の世界。鉱物をこよなく愛した宮沢賢治の詩集を読んだり、漫画『宝石の国』のキャラクターの公式イメージキャンドルを作ったり、ついには鉱物キャンドルの本を執筆したり。nuri candleと鉱物の出会いから生まれた神秘的な鉱物キャンドルの数々をご紹介。

5

12月26日公開

お薬としてのキャンドル

「精油は瓶の中でまだ生きています」この言葉から生まれたのがnuri candleのアロマキャンドル。火を灯すと精油の生きた効用が広がる、まるでお薬のようなキャンドルです。そんな特別なキャンドルが、美しいレリーフに覆われて特別な空間と時間を作り出すことは言うまでもありません。

6

1月30日公開

作ることは生きること

「いつも気持ちをまっさらにして作業台に向かうこと」時には感覚を研ぎ澄ませて、真夜中の絵付け作業から明け方の海辺へと移ろっていくことも。福岡の自然のなかで、今の自分が作りたいものにまっすぐに向き合うことこそが、火を灯した瞬間に魔法が広がるnuri candleの魅力の秘密のようです。連載最終回。