Arita Masafumi

japonica izumonesia graphicc 代表

未発掘の同時代フォークロアをスケッチして布や紙に表現。・・美術大学をはじめとする様々な教育機関で後進の育成に携わるなか、独自のテキスタイル図案で大衆文化に絵心を添えている。

イズモネシアのテキスタイル

small village(しぜんの国保育園・新園舎)

スモールビレッジ

地域の自然を活かした「里山保育」の理念と、 長期にわたりヨーロッパの福祉や文化を視察してきた園長齋藤紘良さんの経験をもとに、 アートと自然を基盤にしたこどもの創造性を育む保育を実践している。
small villageは2014年に園内のシェアオフィスとして開園され、有田さんをはじめアーティストたちが子どものためにワークショップやプロダクトづくりを行っている。

3small villageの色と形

布地の美しさに色や形を添える

small village のオープニングに際して描き下ろした図案

布地が持つ本来の美しさは、絹の光沢や綿や生麻の素材感など、無地の風合いのなかにこそ豊かに見出すことができます。先染めした糸による織物に関しても、シンプルなものほど、時代や文化を超えた普遍的な美を共有できるといわれています。

もともと美しい布地に、あえてプリントをほどこすには相応の必然性が必要となるわけですが、New Esperanto Labelのシリーズでは、都市生活者のための同時代フォークロアをテキスタイルに落とし込んで衣食住に広げ、Izumonesiaのシリーズでは、地域の神話や伝承文化をミニマムに再現し、未来に継承すべき表現の可能性を探ってきました。

ここ数年取り組んでいるsmall village(しぜんの国保育園・新園舎)での一連のアートディレクションでは、民俗学のフィールドワークのように文化要素を聴きとりながら、そこに新しい色や形を添えていくことを試みています。

新園舎オリジナルファブリックの開発

small village カーテン用オリジナルファブリックのエスキース
(染工場での打ち合わせ)「Chic Chic vol.4(三栄書房)より」

町田市忠生にある保育園での三代にわたる取り組みには、その土地に根ざした地域文化のなかで、コツコツと積み重ねられてきた想いと工夫の歴史があり、時代ごとの革新的な試みを必要に応じて取り入れてきた経緯も重なります。

そして何より、そこに集う子供たち一人一人の生き生きとした個性や生活背景との向き合いが、保育理念を樹の幹とした枝葉のように伸びやかに広がっている様を見ることができます。

新園舎にあわせた新しいオリジナルファブリックの開発に際しては、園と同じ敷地にある神社や禅寺や竜王池など、その地に根付いている文化をベースに、これまでの園の営みを詳細に聞き取り、保育士や園児たちとワークショップを行うなかで、様々なフォルムを浮かび上がらせていくことができました。

テキスタイル制作の醍醐味

色見本・空と星と緑の描写

色に関しても、園に自生する植物の緑や空の青、そして希望と精神性を示す黄色も含め、色の重なりの効果も吟味しながら、パレットのうえに再現していきました。

簡単なシルクスクリーンプリントの場合、アトリエで手刷りで行うことが多いのですが、今回は代官山coccaさんに提携いただくことで、大きな版による高度な技術を要するプリントが可能になりました。図案作家にとって、細やかな文脈を正確にくみとって布に表してくれる職人さんの存在はとても有難く、そういった優れた染工事、そして職人さん達との共同作業は、テキスタイル制作の醍醐味といえます。

small village の昼の色彩、夜の色彩

small village オリジナルファブリック・夜のバージョン

園のカーテンには、small village の昼の色彩が広がっていますが、タイアップ企画として、代官山の店舗で展開されたファブリックには夜の色彩が表されています。

布表現の魅力のひとつに、プロダクトとしての衣食住への広がりが挙げられますが、縁ある土地での新しいフォークロア表現が、ワンピースやスツール等の様々な形で都市生活に添えられていく過程にもとてもワクワクします。

Comment from the Curator

1枚の生地には先人の知識がぎっしり詰まっています。
時代や文化を感じるとても身近な素材なんですね。
先染めした糸で織った生地は微妙なラインの歪みにすら愛着を持つコトができます。
ハンカチや生地のデザインを興すコトの枠から飛び出して、新しいコトにドンドン
チャレンジする有田さんの姿がとてもカッコいいです。

イズモネシアのテキスタイル

1

3月8日公開

Izumonesia – 出雲のDNAが...

シンプルな色と線が織りなす図案の中にどこか懐かしさを感じる有田昌史さんのテキスタイル。作品を生み出すためのインスピレーションとなるのはその土地に根ざした心象風景。ご自身の出身地である島根県出雲に伝承される文化や神話が色濃く反映されています。

2

4月12日公開

Textiles & Objects – 都市...

テキスタイルがまだ現在のように固有の芸術的地位を確立していなかった頃、有田さんの生み出す作品はファッションやデザインの世界で注目され、「新しいフォークロア感覚を布に描いて衣食住へと広げたい!」という初期の想いが結実していきました。

3

5月18日公開

small villageの色と形

現在は東京都町田市にある「しぜんの国保育園」内のsmall villageを拠点にしている有田さん。「子どもの成長、発達に寄与する人はすべて保育者」という園の基本理念に賛同し、自然豊かな環境で子どもたちに囲まれて創作活動を行っています。

4

6月18日公開

ものづくりとコミュニケーション

自ら描いた図案が暮らしの中の様々な場面で活用されること、有田さんはそこにテキスタイルの魅力を見出します。また、その制作過程において多くの人々が関わり、ものづくりを通じたコミュニケーションが生まれることもテキスタイルの醍醐味です。

5

8月9日公開

カンバスとしてのハンカチーフ

新しい表現活動の場として有田さんが注目するのはハンカチーフ。そのシンプルな形状と、安価でリスクの少ない素材は、テキスタイルの世界にポップでバリエーションに富んだ表現の広がりをもたらしてくれます。

6

9月13日公開

100年後に残るもの

100年後の未来に残るもの…。有田さんは、変わることなく親しまれる普遍的な魅力を持った未来のテキスタイル表現に思いを馳せます。いつか最新のテクノロジーを使った画期的な新素材が開発されたとしても、テキスタイルの役割は形を変えながら残り続けるでしょう。