Arita Masafumi

japonica izumonesia graphicc 代表

未発掘の同時代フォークロアをスケッチして布や紙に表現。・・美術大学をはじめとする様々な教育機関で後進の育成に携わるなか、独自のテキスタイル図案で大衆文化に絵心を添えている。

イズモネシアのテキスタイル

4ものづくりとコミュニケーション

暮らしに寄り添える可能性

写真:浅羽千里

テキスタイルの魅力のひとつに、描かれた線や色の「衣・食・住」への広がりがあげられます。若い頃、油彩や抽象的な立体表現に始まり、同時代的なイラストやグラフィック、ときには漫画やカリカチュアまで、様々な表現を模索していくなかで、最期に辿り着いたのがテキスタイル表現です。決定的な理由は、ギャラリーや特定の媒体に留まらない「暮らしに寄り添える可能性」にありました。

写真:浅羽千里

自ら描いた図案が、カーテンやソファー、ベッドカバーやクッション、あるいはランプシェードとして住まいの環境に溶け込む。あるときはシャツやスカートやワンピース、または鞄や靴下や帽子として身体に寄り添う。そしてランチョンマットやティーコージーとして食卓を飾り、身近なステーショナリーグッズとして持ち運ばれる。これらテキスタイル表現ならではの生活への浸透性に触れていく度に、心からワクワクしたのを憶えています。

テキスタイル表現が教えてくれるもの

立体的なモチーフが、一旦は平面の布にデフォルメされ、そしてまた立体的な動きのなかに広がっていくプロセスも魅力的です。テキスタイル表現を通して得られる様々な喜びを伝えることは、美大の講義やワークショップの場でも、次世代を担う若い作家やデザイナー達の意志形成に役立たっています。

ものづくりが繋げるコミュニケーション

写真:浅羽千里

もうひとつ、テキスタイル表現の醍醐味として欠かせないのが、ものづくりを通して繋がるコミュニケーションの広がりです。プロダクトに添えられた意匠が“用の美”を伴って市場に顔を出し、生活に添えられていく過程では、作家と職人、デザイナーと企画制作部、バイヤーにプレス関係者、そして店舗スタッフといった、様々なコミュニケーションのなかで、現代のArts&Crafts運動とも言える濃密な現場を共有していくことが出来ます。

代官山のcoccaさんとは、経営母体となる株式会社コッカさんとのお付合いから数えると既に15年近いご縁になりますが、これまでも、ひとつひとつの丁寧なコミュニケーションの積み重ねの中で、豊かな布表現を創出していくことが出来ました。現在、新しいテキスタイルの開発も進めていて、織・染・繍の三部作+冬物の靴下三種類を、来季の秋冬コレクションとして発表する予定です。ものづくりを介したコミュニケーションの広がりを通じて、暮らしに新しい息吹を与えてくれるテキスタイル表現!デジタルコンテンツ全盛の世の中で、確かな質感を伴った表現として、今後ますます深く親しまれていくように感じています。

イズモネシアのテキスタイル

1

3月8日公開

Izumonesia – 出雲のDNAが...

シンプルな色と線が織りなす図案の中にどこか懐かしさを感じる有田昌史さんのテキスタイル。作品を生み出すためのインスピレーションとなるのはその土地に根ざした心象風景。ご自身の出身地である島根県出雲に伝承される文化や神話が色濃く反映されています。

2

4月12日公開

Textiles & Objects – 都市...

テキスタイルがまだ現在のように固有の芸術的地位を確立していなかった頃、有田さんの生み出す作品はファッションやデザインの世界で注目され、「新しいフォークロア感覚を布に描いて衣食住へと広げたい!」という初期の想いが結実していきました。

3

5月18日公開

small villageの色と形

現在は東京都町田市にある「しぜんの国保育園」内のsmall villageを拠点にしている有田さん。「子どもの成長、発達に寄与する人はすべて保育者」という園の基本理念に賛同し、自然豊かな環境で子どもたちに囲まれて創作活動を行っています。

4

6月18日公開

ものづくりとコミュニケーション

自ら描いた図案が暮らしの中の様々な場面で活用されること、有田さんはそこにテキスタイルの魅力を見出します。また、その制作過程において多くの人々が関わり、ものづくりを通じたコミュニケーションが生まれることもテキスタイルの醍醐味です。

5

8月9日公開

カンバスとしてのハンカチーフ

新しい表現活動の場として有田さんが注目するのはハンカチーフ。そのシンプルな形状と、安価でリスクの少ない素材は、テキスタイルの世界にポップでバリエーションに富んだ表現の広がりをもたらしてくれます。

6

9月13日公開

100年後に残るもの

100年後の未来に残るもの…。有田さんは、変わることなく親しまれる普遍的な魅力を持った未来のテキスタイル表現に思いを馳せます。いつか最新のテクノロジーを使った画期的な新素材が開発されたとしても、テキスタイルの役割は形を変えながら残り続けるでしょう。