Fujioka Nobuyo

インテリアエディター

インテリア雑誌『PLUS1LIVING』ハウジング雑誌『はじめての家づくり』などの編集長を経て、現在では『編集脳アカデミー』主宰として住宅や編集に関するセミナーやコンサルティングを行う。

「居心地のいい家」のつくり方

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7「インテリアが楽しめる家」のプランのポイント

ゆとりたっぷりの広い壁がインテリアの魅力を際立たせている
A邸(寝屋川市)/設計施工:フクダ・ロングライフデザイン

インテリアを楽しむためのポイントは、素材だけではない

インテリアを楽しめる家。
最近は、そんなコンセプトで家づくりを考えるご夫婦がふえていますね。インテリア雑誌に関わってきた者としては、本当にうれしいです。

では、インテリアを楽しむ家づくりのポイントって、なんだと思いますか?家の間取り?つかう素材?
インテリアのこだわりとして自然素材を取り入れる人も多いですが、それよりも、もっと大事なポイントがある!と私は考えています。

それは、壁のデザイン。
もっと言えば、壁の量をどう確保するか?ということです。
これは、インテリア雑誌の編集部から家づくりの雑誌の担当になったときの取材で知ったことです。とてもセンスのいい女性建築家さんにその考え方を伺ったとき、目からボロボロとウロコが落ちました。

私がインテリア雑誌に携わり始めた20年ほど前、日本の住宅は、どんなに素材にこだわって、素敵な家具を配置していても、なんとなく垢抜けない感じがしたものです。原因は、窓にありました。その当時は、輸入住宅のブームがあったものの、まだまだ窓のデザインにバリエーションが少なかったのです。

そう、垢抜けない原因は、大きな掃出し窓にありました。
南側には、大きな掃出し窓。このパターンが、どんな住まいも画一的に見せ、そして実際、家具の配置や壁のデコレーションに大きな制約を与えるため、インテリアも画一的にしてしまっていたのです。

私が、女性建築家の方から教わったのは、「家具の配置をするためには、壁が必要」ということでした。西欧式の現在のインテリアは、窓が多く開放的な日本の住まいのつくりでは、ちょっと合わないのですね。

家具を美しく見せるポイントは周辺の空間や背後の壁
M邸(堺市)/設計施工:フクダ・ロングライフデザイン

もう少し詳しく説明しましょう。
家具を配置するとき、テーブルやチェア、ソファは、空間に自由に置くことができますが、食器棚や本棚、チェスト、AVボードなどは壁を背に配置することになります。そうでなければならないということはありませんが、そのほうが安定しますし、背の高い家具などは壁に固定しないと地震国日本では危険です。

食器棚や本棚、AVボードなどを造りつけ収納にしてしまうケースもありますね。インテリア雑誌の編集長だった身としては、インテリアの楽しみとは、家具そのもののコーディネートでもある、と思います。つまり、造作収納は、インテリアとしてはつまらない(笑)。

さらに言えば、こだわって選んだ家具も、隙間なく並べてしまうと、ちっとも映えません。家具が美しく見えるには、その周辺にちょうどよい空間が必要です。現在の西欧式のインテリアを楽しむためには、美しく配置された家具と、その背景となる壁がたくさん必要なのです。

壁を残して、窓を開く方法

あぁ!そうだったんだ!インテリアを支えているのは壁なんだ!
この発想を教えてくれた女性建築家さんは、さらに、家具を置くことを前提に壁をデザインする方法をいろいろと教えてくれました。
というのも、ただ壁をたくさん作ればいい、というものではないから。日本の場合は、光をたっぷり家の中にとりこみたい、風も自由に通る家にしたい、というニーズがとても強い。「南側に大きな掃出し窓」というのは、施主側の希望を取り入れた結果でもあるのです。
それを両立させる工夫が必要です。

ここで鍵になるのは、窓の配置です。
サッシ窓の規格サイズには、大きく2つ、掃出し窓と腰高窓というのがあります。掃出し窓は、床から180cmほどの高さまで、腰高窓は床から80cmくらい上のところに配置する窓です。輸入のサッシ窓が流通するようになって、窓のデザインはぐっとバリエーション豊かになり、今では規格品でもさまざまな形、サイズのサッシ窓があります。ですが、「窓を配置する」ということでは、掃出し窓と腰高窓の考え方が主流です。そのため、「ここに家具を置きたいのに、窓が邪魔!」ということが、起こりがち。

あらかじめ家具配置を決めて、設計にとりこむ、という考え方もありますが、それだと未来のインテリアに制約を与えることにもなります。家具を買い替えたら? 部屋の用途を変えたくなったら? 未来に起こることは、誰にも予測できないのです。

洗面所の高い位置につけられた「高窓」
M邸(堺市)/設計施工:フクダ・ロングライフデザイン

では、どうするか?
私が教えてもらった答えの一つは、窓を高い位置につける、ということでした。

たとえば、壁を背にしてソファを置きたい。でも、できるだけ大きな窓をつけたい。
そんなときは、ソファの背の位置よりも上に、大きな掃出し窓を配置するのです。掃出し窓は、床から上ではなく、壁の少し上から天井までというデザインになります。

常識にとらわれず、窓をつける位置を柔軟に考える。この方法なら、規格サイズのサッシ窓を使いながら自由な空間をつくることができます。

食器棚や本棚など背の高い家具の上の位置に、横長の高窓をつける、という方法もあります。いわゆる明り取りの窓ですが、風を通したり、光を採り込むには十分。洗面台やキッチンには、よく使われるデザイン手法ですね。
私は、家具の上の位置に配された高窓から、やわらかな光が差し込んでいる空間が、個人的にとても好きです。窓の位置によって、光のニュアンスもデザインできるのです。

壁のどの位置に窓をつけるか、という窓のデザインは、実は外観にも大きく影響するので、設計士さんの技量が試される部分だと思います。内的空間と、外観のデザインを、同時に考えられる。そんな設計士さんが、増えていくといいなぁと思います。

色をもっとインテリアに!

家具の配置という視点から、壁の重要性をお話しましたが、壁はインテリアデコレーションの点からも必要です。日常生活のなかで、目にちょうどよく入ってくるのは、垂直の面。つまり、壁です。ここに絵が飾られていたり、素敵な照明器具から光が当たっていたり、壁自体がペイントや壁紙で彩られていると、インテリアはぐっと豊かになります。

デコレーションはお好みで自由に楽しんでいただくのがいいのですが、ディスプレイにはあまり自信がない(笑)という私のような方には、アクセントウォールをおすすめします。アクセントウォールというのは、四面の壁の一部、たとえば一面をペイントしたり、壁紙を張ったりして、インテリアのアクセントにする手法です。

バスルームを華やかにする明るい配色のアクセントウォール
A邸(寝屋川市)/設計施工:フクダ・ロングライフデザイン

これも日本の住宅の特徴だと思うのですが、壁は白というのが、まだまだ多い。かく言う私も、リフォームの際にはいろいろ考えて、結局はすべての壁紙を白で統一。そして、一部だけ壁紙を張ったり、ペイントすることにしました。

住み始めてみると、白い壁は光をよく反射するので、光の表情を細やかに感じられるのですね。日本人は、光に敏感なのかもしれません。一方で、壁紙やペイントした壁は、インテリアの印象をピシッと決めてくれます。まず目がいくポイントになりますし、インテリアテイストを明確にしてくれるのです。

日本人が好きな白い壁に、インテリアを印象的にしてくれるアクセントウォール。この組み合わせなら、無理なく取り入れられると思います。アクセントウォールだけ模様替えしていけば、気軽にインテリアを変えていけますしね。わが家もそろそろペイント壁の色を変えようか、と思っているところです。

インテリアを楽しみたい!と思っている施主の皆さん。窓の配置とアクセントウォールも、ぜひ検討してみてください。

Chat with the Curator

藤岡 信代
キュレーター 出来 忍

2016.4.4

壁の少ない間取りは家具の配置が困るし、模様替えができるバリエーションもかなり限定されます。インテリアの面でも大きいポスターを貼るスペースがないのでインパクトのあるお気に入りを見つけたところでどうすることもできないなんて、、、、
壁と窓の関係性をよく考えないと、単に光を取り入れるだけにならないように注意しなくてはいけない事が良くわかりました。窓の位置によって随分と部屋の印象は変わりますもんね。アクセントウォールも挑戦したいと毎回、思うのですが家具の配置に悩まされそうで、いつも避けてしまいます。実際、藤岡さんは取り入れたことで模様替えの難易度は上がりましたか?

2016.4.11

いままさに住んでいる家が、窓だらけでインテリアに困っているので(笑)、今回の記事は力が入ったかもしれません。アクセントウォールは、わが家ではメインではない壁で愉しんでいます。ダイニングルームは、ドアのそばで家具が置けない壁です。入口からは目に入りにくいのですが(フォーカルポイントではない)、部屋の中に入るとアクセントウォールが目に入ります。もう一つは、トイレの壁。これは入口に対して正面の壁のみ、壁紙を張ってもらいました。全部を壁紙にすると圧迫感が出るので一部だけ。もう一カ所は、バスルームの壁で、洗面台のバックが壁紙になっています。こうやって書いてみると、家具が前に置けないような壁を選んでいますね。白壁のままだと印象に残らない壁にこそ、色や柄を加えるとインテリアが面白くなると思います。  

そうですよね!インテリアを面白くするのにぜひ、取り入れたいアクセントウォール。ですが、壁に色柄を取り入れるにはナカナカ勇気のいる作業なんですよね。
貼ってみた感じを見るコトができないのでイメージするコトが難しいです。
部屋のヒト面だけでもかなりインパクトが付きます。私だったら絶対に失敗できない!と意気込んでしまいそう。
最近ではアクセントウォールの参考になる書籍も沢山出版されています。どちらかと言うとペイント本の方が多いかな?クロスで施工するにしてもインテリアに取り入れる色を探すのには本はイイ方法かもしれませんね。私が最近、気になる壁紙は展示会でよくお見かけするメーカー「Who」(http://whohw.jp)です。サンプルも送って頂けます。ご参考までに!!

2016.4.25

そうですね。壁に使う色や柄は、小さなサンプルだけで判断しにくいと言われています。大きな面になったときに、思っていた以上にインパクトが大きくなるからですね。まず、いろいろなサンプルや見本を見ておくことは大事だと思います。 すっかりアクセントウォールの話で終始してしまいましたが、私が伝えたかったのは、“壁をデザインする”という発想です。具体的には、壁の分量と窓の大きさ・配置、壁自体のデコレーションの3つを考えてみるだけで、インテリアはぐっと楽しくなるということ。家づくりというと、ついつい間取りに目がいきがちですが、間取りがだいたい決まったら、垂直面での見え方・デザインをぜひ楽しんでみてほしいと思います。

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