Arita Masafumi

japonica izumonesia graphicc 代表

未発掘の同時代フォークロアをスケッチして布や紙に表現。・・美術大学をはじめとする様々な教育機関で後進の育成に携わるなか、独自のテキスタイル図案で大衆文化に絵心を添えている。

イズモネシアのテキスタイル

あたらしい夏のcarbon

出雲

いずも

かつては出雲国(いずものくに)と呼ばれ、後に島根県となった山陰地方の地域。出雲大社があることからも、古くから日本神話において重要な土地とされている。
また、『古事記』や『日本書紀』と並ぶ歴史書である『出雲国風土記』が編まれた地としても知られ、古代の出雲の人々の暮らしぶりや文化が数多く伝承されている。

1Izumonesia – 出雲のDNAが描く心象風景

神話の国、出雲の風景

『Hiikawa(出雲水脈図)』 写真:船山実桜/技術協力:富宏染工× ground works/箔・図案:イズモネシアグラフィック

私が生まれた出雲には、八岐大蛇にもたとえられる大きな河が流れています。神話の世界さながらの雄大さでキラキラと輝きながら流れていく水面は、私が描く線や色彩にも、幼少期の心象のまま、流れ出しているようです。

『Hiikawa』と題した出雲水脈図もその一つ。
中州と河の流れが織りなす景観は、山陰特有の雲間から差し込む光に照らされ、見るものの心を奪います。若い頃は月並みに欧米の先鋭的なアートや洗練されたデザインに憧れていた私ですが、実際に海外に出向き、自身の足元を見つめざるを得ない状況に至ったとき、パチッとDNAの奥に隠されていたスイッチが入ったかのように、幼少からの心象風景の堆積が溢れ出してくるようになりました。

出雲+島国(nesia)=イズモネシア

『龍脈』図案:イズモネシアグラフィック

「イズモネシア」というキーワードは、その一連の経験から生まれてきた造語です。太平洋側からみた伊勢ながらの正史の視点、そこに日本海側から見た根の国ともいわれる出雲の視点を重ねて自身のルーツを確かめるとき、そこには縄文ながらのアニミズムや弥生期のシャマニズムを背景に国造りされてきた島々の、豊かな四季に恵まれた風土が、新たな魅力を備えて浮上してくるように感じられたのです。

『龍脈』と題したイズモネシア定番図案は、出雲地方に限らず、日本各地で確認できる「雄大に流れるもの」への畏敬をこめて描きました。この図案は長崎おくんち祭りの手ぬぐいにも起用していただいたのですが、自身が生まれた土地への想いの深さほどに、その土地土地の有り難みを実感できると思うのです。

土地に寄り添う図象

東京都町田市の「しぜんの国保育園 small village」 写真:marisa shimamoto

現在、町田の奥まった場所にある保育園の片隅に工房を構え、その地域で育つ子供達とたくさんのスケッチを重ねながら、新たな水脈図の描写に挑んでいます。

園のカーテンには有田さんのテキスタイルが使われている
写真:marisa shimamoto

園の別称である「small village」という名のテキスタイルも“この土地から生まれてくる新しい神話や伝承”をテーマに、子供達とのワークショップのなかで描きだし、広幅の布地にシルクプリントすることで園のカーテンとなりました。園舎に降り注ぐ陽の光にすかされた図象が園児達のかけがえのない日々に寄り添うことを考えると、一つ一つの描く行為に、そして美しい純白の生地に色を加えていく儀式に、いつものことながら身の引き締まる想いがするのです。

2016年1月に代官山coccaで開催されたアーカイヴ展の様子

園の敷地は小高い山の小さな森のようになっていて、由緒ある禅寺や神社もあり、山あいを散歩すると木漏れ日のなかで季節の草花の香りに包まれるといった、都心では味わうことの出来ない情景にひたることが出来ます。

その景観は幼少期を過ごした出雲地方や奥出雲の思い出とも重なって、また新たな気持ちで世界を見て感じて描写していく際の基軸となっていく気がしています。この地に通うようになってから、関連の幼稚園でアートワークや園児達とのワークショップを通じた交流も広まり、これまでの美大生の造形指導に加え、また新たな角度から、次世代育成とひと繋がりの制作活動をひろげていけそうです。

あたらしい夏のcarbon

イズモネシアのテキスタイル

1

3月8日公開

Izumonesia – 出雲のDNAが...

シンプルな色と線が織りなす図案の中にどこか懐かしさを感じる有田昌史さんのテキスタイル。作品を生み出すためのインスピレーションとなるのはその土地に根ざした心象風景。ご自身の出身地である島根県出雲に伝承される文化や神話が色濃く反映されています。

2

4月12日公開

Textiles & Objects – 都市...

テキスタイルがまだ現在のように固有の芸術的地位を確立していなかった頃、有田さんの生み出す作品はファッションやデザインの世界で注目され、「新しいフォークロア感覚を布に描いて衣食住へと広げたい!」という初期の想いが結実していきました。

3

5月18日公開

small villageの色と形

現在は東京都町田市にある「しぜんの国保育園」内のsmall villageを拠点にしている有田さん。「子どもの成長、発達に寄与する人はすべて保育者」という園の基本理念に賛同し、自然豊かな環境で子どもたちに囲まれて創作活動を行っています。

4

6月18日公開

ものづくりとコミュニケーション

自ら描いた図案が暮らしの中の様々な場面で活用されること、有田さんはそこにテキスタイルの魅力を見出します。また、その制作過程において多くの人々が関わり、ものづくりを通じたコミュニケーションが生まれることもテキスタイルの醍醐味です。

5

8月9日公開

カンバスとしてのハンカチーフ

新しい表現活動の場として有田さんが注目するのはハンカチーフ。そのシンプルな形状と、安価でリスクの少ない素材は、テキスタイルの世界にポップでバリエーションに富んだ表現の広がりをもたらしてくれます。

6

9月13日公開

100年後に残るもの

100年後の未来に残るもの…。有田さんは、変わることなく親しまれる普遍的な魅力を持った未来のテキスタイル表現に思いを馳せます。いつか最新のテクノロジーを使った画期的な新素材が開発されたとしても、テキスタイルの役割は形を変えながら残り続けるでしょう。