Ohara Nobue

調理師

大阪市出身。2009年に沖縄県座間味島へ、2013年に長崎県小値賀町斑島へ移住。調理師として小値賀島の給食センターに勤務。

小値賀町斑島のお昼ごはん

長崎県小値賀町斑島

ながさきけんおじかちょうまだらじま

斑島(まだらじま)は、長崎県北松浦郡小値賀町の離島。本島の小値賀島とは斑大橋でつながっている。島の面積は1500平方キロメートル程、人口は300人に満たず、自然が手付かずのまま残っている。小値賀島の小・中学校は、長崎県で給食制度のない最後の学校として知られていたが、2015年6月に待望の給食制度が始まり、島の直材を使った食育が注目されている。

4斑島のあたらしい家族(後編)

前回までのあらすじ

ご主人の生まれ故郷である斑島で生きていくことを決意した大原さん一家。家族を温かく迎え入れてくれた島の人々に支えられ、日々島の文化を吸収しています。

ミニトマトの成長をたしかめる大原さんのご主人

斑島で農家の嫁になる

実をつけたミニトマト。夏から秋にかけて収穫します。

旦那さんは現在、ミニトマトの栽培を学ぶ研修生です。2年目の今、約2,000本のミニトマトの管理をしています。来年の1月からは独立し、農業を生業としていきます。

私は農家の嫁になるのです。
これも予想外の事です。同じ1月に新しい家族も誕生します。2016年は大原家の変化の年です。家族みんなで励まし合い、健康で笑っていられるように願うばかりです。


大原家伝統の味噌作り

自宅の庭先で大豆を煮込んでいる様子。

そう言えば、8月にはお味噌を作りました。
味噌作りは旦那さんのおばぁちゃんから学びました。おばぁちゃんはもう60年以上お味噌を作り続けているそうです。初めて手作りのお味噌を食べた時の美味しさの衝撃は忘れられません。昔は各家庭でお味噌を作っていたそうですが、今ではこの島で私だけだよとおばぁちゃんは言っていました。

3回目の今年は初めて全てを一人で行いました。材料は麹、大豆、塩のみです。麹は米麹、麦麹、米麦の合わせ麹。好きな麹を選びます。

まずは麹作りからです。
お米を蒸篭で蒸して麹菌を振ります。自宅の2階を麹部屋にして温度管理をして麹を育てていきます。私はこの麹作りが大好きで味噌作りの醍醐味だと思います。

麹に大切に毛布をかけてあげて育てていると、家族が増えたような感じがするのです。この時は家中に麹のいい匂いが漂います。1日に何度も麹をほぐしてあげてバラバラにします。この作業のことを、おばぁちゃんは方言で「あせる」と言います。九州地方では「かき回して良いものを探しだすこと」をそう言うようです。
麹の成分のせいでしょうか、麹を「あせる」と手がすべすべになります。


朝の4時から火入れをして、大きな羽釜で大豆を炊き上げます。

麹が出来上がったら大豆を茹でてミンチ状にして、麹と塩を合わせて混ぜます。大豆の煮汁も加えます。この加減が難しいです。大豆は大きなハガマで明け方4時頃から火入れをして炊き上げました。

あとは瓶にぎゅうぎゅうと押し込んで熟成をさせます。空気を抜かないとカビの原因となります。3ヶ月経過した頃から食べれるそうですが、やはり1年程度熟成させるととっても美味しいお味噌になります。


長崎県五島列島の郷土菓子、カンコロ餅

五島列島に古くから伝わる郷土菓子のかんころ餅づくり。

秋になり、島ではお芋も採れだしているようです。
朝市でも初芋の文字が出ていました。

カンコロ餅はこちらの郷土菓子です。さつま芋の皮を剥いてスライスして湯がきます。何日も天日に干してカラッカラにさせます。これをカンコロと呼びます。カンコロをまたお湯で湯がいて戻し、お砂糖と餅とゴマやヨモギを入れたりして棒状に丸めて完成です。おばぁちゃんも毎年年末に作って沢山の人に送っています。

カンコロ作りの日には親戚が集まりみんなで手伝います。各家庭で味も違い、誰のカンコロがうまかねとかそんなお話になります。今年は出産の為、お手伝い出来ないのが本当に残念です。

カンコロ餅、甘くて優しい味です。ぜひ、みなさんも食べてみてください。なつかしい気持ちになります。

大原さんのコラム『小値賀町斑島のお昼ごはん』は今回で最終回です。都市部から地方への移住が見直される今、島暮らしの魅力も厳しさも含めて、生の声を伝えていただき、ありがとうございました。斑島が属する五島列島では、過疎化や少子化の進む島々の文化を保持するために、島の伝統文化や特産物を支援するプロジェクトが盛んに行われています。読者の皆様もぜひ五島列島を訪れてみてください。

Comment from the Curator

大原さんの「島暮らし」のお話は今回で終わりです。
五島列島にもたくさん人がいなくなった島があるそうです。
その取り残された島のどこかに立ってみたら素敵な景色がたくさんあるんじゃないかと想像してしましました。
人が少なくなったと言っても斑島にはこのキレイな景色を見る人がいます。
この島がコレからも栄えて島の伝統や習わしをちゃんと受け継ぐ人が途絶えないで
ほしい。
斑島でいつの日か朝日や夕日、夜空を眺める日が見れるとイイな~と
願っています。大原さん、素敵なお話をありがとうございました。
2人目のお子様の誕生を島の人と同じように楽しみにしております。

                         2016.12.16.wed 

 

小値賀町斑島のお昼ごはん

1

7月15日公開

小値賀町斑島への移住

憧れの島暮らしを実践中の大原さん。辿り着いたのは、長崎県の小値賀町斑島(おじかちょうまだらじま)。人口300人足らずの小さな島で、必要なものは何でも自分たちで「つくる」生活が始まります。

2

10月1日公開

小値賀町に給食がやってきた!

小値賀町に待望の給食がやってきました。一見豊かな食文化に見える島の暮らしですが、実はその「豊か過ぎる」食材ゆえに大きな問題が…。子供たちの給食を通じて、島の食生活のあるべき姿を考えます。ゴーヤの漬物レシピも公開!

3

11月3日公開

斑島のあたらしい家族(前編)

ご主人の生まれ故郷である斑島で暮らす大原さん。それ以前に住んでいた沖縄県の座間味島を離れて斑島を選んだのには大切な理由がありました。大原さん一家を迎え入れてくれた斑島の魅力とともに、移住当時のことを振り返ります。

4

11月17日公開

斑島のあたらしい家族(後編)

斑島が属する五島列島には豊かな自然に育まれた伝統文化がたくさんあります。大原家に代々伝わる手作り味噌や、郷土菓子のかんころ餅など、季節の食材をふんだんに使った食文化を大原さんはひとつひとつしっかりと受け継いでいきます。