Fujioka Nobuyo

インテリアエディター

インテリア雑誌『PLUS1LIVING』ハウジング雑誌『はじめての家づくり』などの編集長を経て、現在では『編集脳アカデミー』主宰として住宅や編集に関するセミナーやコンサルティングを行う。

旅で見つけた心地のいいインテリアのヒント

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Go Native Earls Court Hotel

ごー・ねいてぃぶ・あーるず・こーと・ほてる

ロンドンのアールズ・コート地区は、アールズ・コート建築と呼ばれる高級建築が並ぶ東側と、学生や旅行者で賑わう西側のふたつの顔を持つ。街のシンボルとなっているアールズ・コート・エキシビジョン・センターは、Led ZeppelinやPink Floyd、The Rolling Stones、Queen、Oasisなど、名だたるミュージシャンがコンサートを開催したことでも知られている。

6コンパクトであることの快適さ~アパートメントホテルの合理的な間取り

アパートメントホテルに泊まったことはありますか?
私は、アパートメントホテルに泊まることが憧れの一つでした。旅先で、“暮らすように過ごす”ということに、すごい憧れを持っていて、キッチンつきのアパートメントホテルはその象徴だったのです。今回は、そんな憧れホテルに泊まった体験談を少々。

“旅先で暮らす”アパートメントホテルの魅力

旅好き、特に海外旅行好きの私にとっては、まずはできるだけ長期滞在をしてみたい、という気持ちが強くあります。1週間と言わず、できれば3週間から1カ月くらい、気に入った土地で、のんびりと、暮らすように過ごしてみたい。朝市に行って新鮮な野菜を買い、簡単に調理して、昼からワインを傾けながら(笑)、ゆったり楽しんでみたい。そんな旅のスタイルには、キッチンつき、ランドリーつきのアパートメントホテルがぴったり。そして、長期滞在者向けのアパートメントホテルは、1週間以上の宿泊でないと泊まれない、というのがほぼ常識でした。

それが変わってきたのが、たぶんロンドン・オリンピック前後だったと思います。
2014年の春と夏にロンドンに出かけたとき(取材目的でした)は、1泊から宿泊可能なアパートメントホテルがネットで予約できるようになっていました。格安ホテルに比べると、ちょっぴり割高。でも、憧れのアパートメントホテルですよ?体験しない手はありません(笑)。インテリアが素敵で、できるだけ安めのホテルに1泊だけ、予約をとりました。

本来の憧れは、長期滞在して“暮らすように過ごす”こと。1泊ではそれはかないませんが、一般家庭のような間取り、インテリアのホテルは、想像以上に快適でした!ちゃんとダイニングテーブルで食事をし、ソファに寝転がってテレビを観、ベッドルームで眠る。食事は結局、スーパーでお惣菜を買ったので(もちろんワインも!)、キッチンは使わなかったけれど、洗濯乾燥機がうれしくて、意味もなく、たくさん洗濯をしました(笑)。

とても充実した、アパートメントホテル初体験。お試しとしては十分、だったのですが……。
滞在中、どんどん体調が悪くなり、そのままパリへ向かう予定を結局、キャンセル。ロンドンで休養することに。

予定外のホテルをどうしよう?
迷うことなく、2泊連泊できるアパートメントホテルを探しました。それが、今回紹介する、「Think Apartment Earls Court」。現在は、別のチェーンになっているようで、「Go Native Earls Court Hotel」で検索できます。

「間取りってすごい!」と感じたアパートメントホテル

このホテルに決めた理由は、都心に近いチェルシーにあることと、隣が「TESCO」の巨大スーパーだったこと。多少体調が悪くても、お隣に行けば食料は確保できます(さらには大きな薬局もあったので、風邪薬も調達できました)。

近代的な外観のホテル。日本でいうビジネスホテルのような、縦長の部屋にベッドルームとバスルーム、LDKが配置された間取り。部屋のドアを開けると、右手にベッドルーム、左手にLDKと振り分けられるつくりだったのですが、ん?? これ、何かに似ている……。

そうだ! 日本のワンルームマンションだ!

正確には、ベッドルーム+LDKなのでツールームなんですが、細長い空間にコンパクトに収まった感じが、とっても「日本的」と感じたのです。

まずは、LDKスペース。部屋の奥が掃き出し窓サイズというのがまた「日本的」と感じさせるのかも。右手前に少し見えているのがキッチン。冒頭の写真と合わせてみるとよくわかると思います。テーブルは、ヨーロッパらしく、小ぶりです。イギリスをはじめ、ヨーロッパの一般家庭では、大きなテーブルを囲むダイニングルーム以外に、キッチンの中に小さなテーブルセットを置くことが多いんです。朝食や、簡単なティータイムはキッチンでいただくんですね。旅先では、夕食は外食するでしょうから、これで十分というわけです。

その分、ゆったりとソファスペースがとれます。オットマンまであって、くつろぎ感たっぷり。このオットマンが、実はコーヒーテーブルがわりになったりもします。ソファに寝転んだり、オットマンに食べ物を置いて食事をしたり。実は合理的な家具なんですよね。そして、写真では見えませんが、カメラの位置の頭上あたりに壁付けのテレビがありました。天井から下がっている感じです。ソファに寝転がって観るのにぴったりの位置でした(笑)。

水回りは、こんな感じ。出入り口も、シャワールームのドアもスライド式で、その点も日本的かも。コンパクトな収まり具合はほれぼれするほどです。

動きがスムーズということは、ストレスフリー

水回りを過ぎて進むと、ベッドルームです。ダブルベッドのみ、照明も壁づけの2灯とダウンライトのみというシンプルさ。

前回のアメリカンタイプのホテルの話では、空間が空いていること自体が快適、ということを書いたのですが、このホテルは、とにかく無駄を極力排していて、その上で暮らしに必要なものが十分に配置されている、という感じ。思わず間取りをノートにメモしたくらい(笑)です。

レイアウトとしても、LDKと水回り、ベッドルームは一直線に並んでいるので、動線はほぼまっすぐ。最短距離で行き来する感じです。「合理的であるということは、こんなにストレスフリーで、快適につながるんだ」と、感動してしまいました。

これは普通のホテルではおそらく感じなかったことです。ホテルならではの特別なレイアウトが当たり前で、それ以上は求めないし、気づかない。アパートメントホテルのように、一般の住宅に近いレイアウトだからこそ、その洗練の具合が感じられたのだと思います。

ちょっと細かいことなんですが、この照明も、うなりました。これは、ここ5~6年、流行っている、「ペンダントライトを食卓以外の場所に使う」という手法なのですが、普通だったら、テーブルランプやフロアランプを置くところに、ペンダントライトを下げています。それもコーナーに近い場所に設置して、わざと上側に出る光を多くして、ウォールウォッシャーのように間接光を多く使えるようにしているんです。

天井側のコーナーを明るく照らすことで、上に広がる抜け感がもたらされ、広々と感じる視覚効果が得られますし、やわらかな反射光で、雰囲気よく明るくすることができます。

そして、なによりも、ペンダントライトにすることで、スタンドや家具を置くスペースをとらなくていい! その分、ソファを大きく、ゆったりと配置することができるんですよね。なんて合理的なんでしょう!!

このプランを、日本のマンションの間取りの参考にしてほしい!と心底思いました。
“暮らすように過ごす”という憧れのスタイルとはほど遠く(笑)、ただひたすらソファで休み、インテリアのビフォー&アフター番組を見まくった2日間。買い物以外の外出もせず、ひたすら部屋で過ごしたという意味では、貴重な海外“滞在”体験になりました。そして、合理的なコンパクトさの価値を再認識しました。

これって、本来は日本の強みですもんね、インテリアの分野でも、「合理的でコンパクトで、だからこそ快適で、美しい」。そんな空間が、日本でもどんどん出てくるといいなと思います。

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