Fujioka Nobuyo

インテリアエディター

インテリア雑誌『PLUS1LIVING』ハウジング雑誌『はじめての家づくり』などの編集長を経て、現在では『編集脳アカデミー』主宰として住宅や編集に関するセミナーやコンサルティングを行う。

旅で見つけた心地のいいインテリアのヒント

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Dorset Square Hotel

どーせっと すくえあ ほてる

ロンドンの高級住宅街の一角にあるホテル。38あるすべての部屋のインテリアが異なるのが特徴。経営者のケンプ夫妻が建てた最初のホテルだったが、2002年に一度売却され、その後2012年に再び夫妻の元に戻り、全面的にリニューアルして再オープンした。

1インテリアは楽しむもの 〜イギリスのホテルで

こんにちは。フリーエディターで、旅するブログの先生をしている藤岡信代です。KAMAKULANIでの連載、第2シーズンが始まりました。

今回からは「旅で見つけた心地のいいインテリアのヒント」がテーマ。
私が大好きな“旅”と“インテリア”を合体!想いをお伝えするエッセイをお届けします。

はじめて旅先で感動したインテリアは?

さてさて、私の“旅で見つけた心地いいインテリア”の初体験と言えば、インテリア雑誌『PLUS1(当時の誌名)』の取材で、ロンドンのテレンス・コンラン氏のお住まいを訪ねたときまでさかのぼります。1996~1998年ころでしょうか?当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだったコンラン氏、事務所の上のペントハウスはさまざまなメディアで紹介されていて(プレス対応用だった、という噂も)、私も他の雑誌の誌面では見ていたのですが、その空間に足を踏み入れたときの感動は忘れられません。

ゆったりとした空間に、使いこまれた跡のある家具やファブリック、本、道具…。なにより印象的だったのが、グリーンと光。美しいデザインの家具や道具の“おしゃれ感”はもちろんのこと、光や空気感といった目に見えないものの美しさ、心地よさは、私の「インテリア観」を決定づけてくれた気がします。

「インテリアって、家具や雑貨などのモノではなく、空間そのものなんだ」ということ。

写真がないのがほんとうに残念です。以来、インテリアについての知識や価値観は、私はイギリスを基準にしています。

遊び心が満載!ドーセットスクエアホテル

インテリアの力を実感するのは、やはり個人のお住まい(コンラン氏ほどのセンスでなくても)なのですが、取材という名目がなければ人の家に足を踏み入れるのはなかなか難しいですよね。そこで、出版社を離れたのちは、積極的に「インテリアが素敵なホテル」を探すようになりました。日本のホテルはまだまだまだ保守的?で、好みが分かれるような個性的な個室を設けるところが少ないですが、イギリスでは個性的なインテリアも売りのひとつ。その中でも今回は、現代的なセンスと伝統的なデコレーションの魅力の両方を感じた、「ドーセットスクエアホテル」のお話をしたいと思います。

このホテルに泊まろうと思ったのは、2013年秋に発行された「フィガロジャポン」の「ロンドンの新しい遊び方。」特集号に掲載されていて、ひと目ぼれしたから(2014年5月末発行の「Hanako」のロンドン特集にも紹介されていました)。そんなに規模が大きくない、デザインホテルとかスモール・ラグジュアリーホテルと呼ばれるホテルのひとつです。

場所は、地下鉄のBaker Street(ベイカーストリート)駅から歩いて5分くらい。近くにはMarylbone(マリルボーン)駅もあり、朝夕は通勤の人も行きかうのですが、落ち着いた感じの一画にあります。プライベートガーデンであるDorset Square(ドーセットスクエア)に面していて、外観は、一見、ホテルには見えないほど控えめな佇まい。エントランスを入ると小さなカウンターだけのレセプション、モダンなインテリアのドローイングルームに隣接していて、階下に居心地のいいカフェ&レストランがあります。客室は全部で38室です。

壁紙&ファブリックの遊びは、イギリスの伝統

客室へと向かうエレベーターの扉が開いた瞬間、目にとびこんできたのは、鮮やかな野菜やフルーツ柄の壁紙!光の差さない廊下が明るい印象になり、「さすが、イギリス!」とうなりました。

イギリスのインテリアデコレーションは、柄と色づかいがやはり特徴だと思います。同じヨーロッパでも、パリのインテリアデコレーションは、色は多用していてもあまり柄という印象はない。ところがイギリスは、ファブリックにも壁紙にも色だけでなく、柄をたくさん使います。最近のコンテンポラリースタイルは、柄づかいが少なくなっているものの、人気上昇中のこのホテルのデザイナーのキット・カンプさんは、ファブリックの柄使いが巧みなことでも知られているのです。

キット・ケンプさんは、Firmdale Hotels Groupをご主人と共同経営し、ご自身でデザインも手がけていて、系列にいくつものデザインホテルがあります。25年前、おしゃれなB&Bとしてガイドブックによく掲載されていた「Number Sixteen」も、今は同じグループ。サイトを見ると、「グループのホテル全部に泊まってみたい!」といつもワクワク♪

Dorset Square Hotelのインテリアについて語るデザイナーのキット・ケンプさん

私が泊まった部屋は、赤を基調にし、白と黒、シルバーの無彩色を上手に使って、品よく落ち着いた感じにまとめられていました。ちょっとレトロ感のあるプリントをアクセントにしているのですが、壁紙の2色の貼り分けや、白や黒の差し色の配分がシャープな印象を与え、モサッとした感じにならないところがさすが。クラシックな印象を与える形の背の高いヘッドボードに、モダンな色と柄のファブリックという組み合わせも、古さと新しさのちょうどいいミックス。伝統を生かしつつも、新しいものを生み出す。こういうイギリスのセンスに、私はいつも魅了されてしまうのです。

モチーフをうまく使うと、遊びがもっと活きてくる

このホテルはプライベートガーデンに面しているのですが、そこには昔、クリケット場があったのだとか。そのため、ホテルのインテリアには、そこかしこにクリケットのモチーフが使われています。

たとえば、寝室のクローゼットの取っ手が、クロケットのボールだったり。地下のレストランに、クリケットの道具を使ったアートやモノクロ写真が飾られていたり。

インテリアを飾るということは、本来、「こんなものが好きだよ」「こんな由来があるんだよ」と遊ぶように楽しむことなんだ!と実感させてくれます(そう、これを置けばおしゃれに見える…といったことではなく)。

連想ゲームのようにインテリアを楽しむ、という点では、ぜひぜひ、このレストランも見ていただきたいところ。

「The Potting Shed」という名前のとおり、ガーデンを思わせる明るいイエローグリーンの壁に、小さな白いポットが並ぶディスプレイ。デコラティブな脚のデザインに金属のトップを合わせたテーブル、張り地やデザインを変えたチェアやスツール…。CAVEのようにアーチ天井になったスペースや、素朴な使い込んだ木のテーブルなどなど、こちらはスタイリッシュとナチュラルの融合といった感じです。これもやはり、ガーデンの目の前にあるということから、モチーフを持ってきているのだと思います。

日本人のふつうの感覚からだと、色も柄も装飾も、ありすぎる!と感じるかもしれませんが、そこをまとめあげるのが、インテリアデコレーションの醍醐味なんじゃないかな、と思います。

生きてきた時間が長くなればなるほど、経験が豊かに深くなればなるほど、身の回りに置いておきたい&飾っておきたいものは多くなるはず。自分の人生を豊かにすると同時に、住まいの空間も豊かにデコレーションしたい。そんな想いがあふれてくるホテルです。

シンプルだけでなく、装飾を楽しむインテリア、ぜひ一度、ホテルで体感してみてください。

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