最近はもっぱら、展示に出す作品の制作をおこなっている。毎日、絵を描きつづけられるということは本当にしあわせなことだなぁと思う。わたしは元々、絵を描くことは好きだったが、自分の絵を好きになれず自信もなく(それは今もだ)、まさかそれで仕事をいただいたり展示をするだなんて想像だにしなかったことだ。
このあいだ、だいすきなチューリップの絵を描いた。
F30サイズの大きなキャンバスに描くことは普段はほとんどないから、少しどきどきとする。今回は絵の具のにじみを生かした絵を描きたいなぁ、母が家に飾りたいと言っていたので、部屋にあると優しい気持ちになるようなものを、とぼんやり考えながら。基本的に、お仕事以外の絵はほとんどエスキースをしない。頭のなかでぼんやりイメージした完成図に向けて、色をどんどんとのせていく。下書きは、ずっと鉛筆だったが最近はクレパスで描くことが多い。なんとなくその時の気分に合わせて色を選んで下書きをした。今回はピーコックブルー。
わたしは画面を立てて絵を描くことがとても苦手なので、基本的に部屋の床に寝かせて描いている。服はすぐに汚してしまうので、エプロン代わりのワンピースをいつも着用している。どろどろ。床に敷いてある絨毯も、どろどろ。そろそろ買い替えの季節かなと思っている。
この日はなんとなく優しい色がどんどんのっていった。春らしいような気もする。が、少し絵がぼんやりとし過ぎてしまったので、少しだけつよい色を加えてあげて絵を締めるような仕事も入れた。
だいたい完成。なるべくひとの生活に近いところにある絵を描きたいと思う。よく、自分の部屋のいたるところに置いたりして、しっくり感を確かめたりもしている。これが、広いギャラリーにあるとどういう雰囲気になるんだろう。このコラムが配信されている頃には、きっと目にしてくださった方も多いはず。いろんな方のご感想を聞ければと思っています。
サインは、フルネームのものと、sa. (サア〜と知り合いに呼ばれているサイン)があって、かなり気分で描いている。どちらもわたしです。
絵によって描き進め方は本当に様々で、ひとによっても様々なのだろう。わたしは描き始めるまでがとても長く、始めると手が早い方らしい。
このCDジャケットの仕事に関しては、絵は学校のアトリエで描いていた。制作スケジュールが大学の課題と並行していたため。依頼をしてくれたのが、わたしの絵を前から気に入ってくれていた友人でもあったため、最初から自分のイメージと相手のイメージの共有がしやすかった。このお仕事だけでなく、いつもわたしの絵を気に入ってくれて依頼をしてくれる方は、提案したイメージを理解してくださる方が本当に多い。とてもありがたいです。
わたしは、“誰かの生活の中で一緒にそっと、でもしっかりそこにある、ふと見た時にちょっぴり嬉しい気持ちになる”ような絵を描けるようになりたいと、ここ半年くらいで言葉にできるようになった。暮らしの中にあるイラストレーションとして、どんな絵が描けるのだろう。2月16日から行う2人展(編集部注:個展は終了しました)では、それを個人のテーマとしてひっそり掲げている。そしてこれからも自分の中での大きなテーマになると思う。わたしがぼんやりとイメージする“心地よい絵”までの道のりはまだまだ遠い。
三嶋さつきさんがアートワークを担当したチヂマツミキ with カスタムの1st EP『two do』のお取り扱い店については公式サイトへお問い合わせください。
3songs ¥1,000 (tax in)
吉祥寺「にじ画廊」にて三嶋さつきさんの個展『いきをすう』が開催されました。私生活をテーマに、ギャラリーの壁を三嶋さんの部屋を見立てて作品を展示。グッズも販売されました。
また2Fでは、三嶋さつきさんと、友人でテキスタイルアーティストの木津つかささんとの二人展『太陽と呼吸』も同時開催。ふたりの作品の対比と調和を楽しみつつ、空間の中の豊かさを感じられる展示となりました。
三嶋さつき
References & Thanks to
1
1月23日公開
現役美大生でありながら、プロとしてCDジャケットや雑誌の挿画のデザインなどをこなす話題のアーティスト、三嶋さつきさん。Instagramで1万人以上のフォロワーを集めるなど、インターネットでもその評価は着実に広まっています。平日は学校、週末は自宅でデザインの仕事をしながら、デザインとは何か?という根源的なテーマに向き合っています。
2
2月17日公開
学校や仕事のあいまにも絵を描く。「部屋にあると優しい気持ちになるようなものを」そんな創作活動への姿勢は三嶋さんのすべての作品に共通しています。最近描いただいすきなチューリップの絵が完成するまで工程を公開!
3
3月21日公開
吉祥寺にじ画廊での個展『いきをすう』と『太陽と呼吸』を終えて、搬入や設営をしながら「お客さんに来てもらえるのか?!」と不安になったことや、それでも会期中にはたくさんの出会いがあったことなどを、いま振り返ります。
4
4月18日公開
12,000人のフォロワーがいたInstagramを突然やめた。それは作家としての決意表明だったのかもしれません。本当は楽したい。だからこそ、指さきだけで簡単にできてしまうことから距離を置こう。今年は学生生活最後の1年、そんな思いを胸に、三嶋さんはどんな時間を過ごすのでしょう。
5
5月30日公開
思い返せば思い返すほど、こぼれるほどでてくるおじいちゃんの思い出。おじいちゃんがもうここにはいないという現実を受け入れるための時間の中で、三嶋さんが今敢えて言葉にしておきたかったこと。
6
6月20日公開
6月、はじめての中国、大連へ。海が近くて、ビルと車の多い都市。そこに生きる人たちは何事にも全力で、人間的で優しい。植物が、たべものが、そして人々が放つエネルギーに圧倒される旅だった。この旅で見たもの、感じたこと、そして帰国後の残り少ない学生生活、作品づくり、そして…。