KONNO Masao

フリーライター / カメラマン / 自主映画監督

学生の頃より海外旅行を繰り返し、今では主にガイドブック『地球の歩き方』などの写真撮影や取材、ポストカードの制作、自主映画の監督などを行う。

写真を通して見る世界

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Mexico City

めきしこ・してぃ

メキシコ合衆国の首都。人口や経済規模でも中南米を代表する大都市として知られる。古代文明が栄えた土地で、テオティワカン遺跡など市内からアクセスできる観光名所も多い。また、メキシコはプロレスやボクシングなどの格闘技の盛んな国としても有名で、「ルチャ・リブレ」と呼ばれるメキシカンプロレスも観光の目玉のひとつになっている。

4メキシコの日本人

日本に背を向け旅立ったはずなのに…

かつてメキシコのグァナファトにあった日本人宿カサ・ビアヘーロスにて

香港のラッキー・ゲストハウスやインド・ヴァラナシの久美子ハウス、ブラジル・サンパウロのペンション荒木など、名前を書くだけでも懐かしくてニヤけてしまう伝説の日本人宿が世界には幾つかある。ある意味、日本に背を向け旅立ったはずなのに、何かと心細い海外で揉まれているうちに、あれこれ言いながらも立ち寄ってしまうのが各地の日本人宿だ。

大抵は旦那さんか奥さんが日本人なのだが、長期宿泊者が管理人を務めているところも多い。日本の本や漫画に囲まれた共有のスペースや台所、冷蔵庫があり、NHKの衛星放送が見られるところもある。薄汚いバックパッカーもデジタル端末持参がもはや普通なので、Wi-Fi無料のところが多い。長期滞在者と短期旅行者の微妙なズレは昔からだが、ネットでのやり取りが増えたぶん宿泊者同士の交流が減るのは仕方ないことなのかもしれない。にも関わらず、このネット時代に棹差すかのように歴代の宿泊者が手書きで書き連ねた情報ノートが置かれているところも多く、毎回チェックさせてもらっている。

同じ日本人宿でも雰囲気は様々、その時にたまたま偶然居合わせたメンバーで良くも悪くもなる。何処の屋台が旨いとか安いとか、何処のお姉さんが可愛いとか、すぐに役立つ情報から只面白いだけのバカ話まで、今日の出来事や旅先や日本での話が夜な夜な続く。参加すると仕事に支障をきたすので、このところは情報ノートを読みながら聞いているだけだが、それだけでも随分楽しい。夜中まで飲んで喋り、起きるのはお昼、ゴロゴロ漫画、時に麻雀に興ずる長期滞在者を、例えば大学生の旅行者が「ああなってはいけない」と見るか、「あんな風でもいいんだ」と見るかで、その後の人生は大きく変わるように思う。

メキシコの日本人宿

メキシコシティの日本人宿ペンションアミーゴ

今年の改訂時期には両親が入院してしまい、現地取材できなかったのですが、インドネシアと交互に近年は2年おきに出かけているのがメキシコだ。

首都メキシコ・シティの日本人宿ペンションアミーゴは『メキシコホテル ― ペンション・アミーゴの旅人たち』という本が20年前に出るほど特に有名。十数年前に滞在した時には、アミーゴの中庭の壁画にも描かれている今は亡き笠置さんが、キューバ革命のあらましを若者に語っていた。学生運動のカリスマ指導者だった笠置さんは、キューバから追放された後、先住民の権利を守るために蜂起したサパティスタに共感し、サンクリストバルで日本人宿カサ・カサを創設したかたでもある。

メキシコ・シティで活動する日本人レスラー

またアミーゴにはルチャ・リブレ(プロレス)の日本人レスラーのお兄さんが遊びに来たりもする。翌日試合を観に行くと、場内の大観衆から大ブーイングを浴びながら、昨夜見かけた気のいいお兄さんがリングで雄叫びをあげ、観客をあおって挑発していた。メキシコでの日本人レスラーは、母国のヒーローに楯突くもっぱらヒールと決まっている。子供の頃、メキシコ人覆面レスラー、ミル・マスカラス&ドス・カラス兄弟の空中殺法に魅せられる一方、悪役のブッチャーやシークを憎たらしく観ていたのを思い出し、彼らは童話『泣いた赤鬼』で憎まれ役に徹した青鬼だったのではないかと感傷的になる。

メキシコ・シティでキレイなほうの日本人宿サンフェルナンド館も、現地で修行する日本人レスラーやボクサーの下宿先としても人気だ。かつてこちらに滞在中、出会ったのは修行中の爽やかイケメンレスラーだったが、かの亀田親子がこの屋上で練習に励む姿を写真週刊誌で見かけたこともある。

メキシコでお会いした日本人

クエルナバカのカテドラル内壁に描かれている日本26聖人殉教壁画

メキシコ・シティから南へ75km、クエルナバカのカテドラルの内壁には、かつ
ての長崎での出来事が描かれている。メキシコ人宣教師を含む26人のカトリック教徒を豊臣秀吉が1597年に十字架にかけ処刑した時の模様だ。

その町の中心部でフィルムや雑貨を売るお店Foto Mayumiをなさっている沖さん御家族とは十数年前に偶然お会いし、その日の閉店後、郊外の御自宅での夕食にお招き戴いた。そしてお邪魔したのは、街中の小さなお店からは想像もできないプール付きの「豪邸」と言っても差し支えないほど立派なお家だった。

Foto Mayumiの沖さん一家(2002年ごろ)

1968年にメキシコへ移住した沖さんは「いつものしかないけど」と餃子と漬物をたらふく御馳走して下さった。壁には広島の田舎の小さな御実家のモノクロ写真と、当時アメリカのホテルチェーンの立ち上げにドバイで働く娘さんや、現地の日系自動車部品工場に入社予定の息子さんなど御家族のカラー写真が何枚も貼られていた。故郷から遠く離れたこの地で餃子と漬物を食べながら、コツコツ働き、自慢の子供たちを育て、この大きなお家を建てたのかと思うと胸が熱くなり「大成功でしたね」とお話した。

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写真を通して見る世界

1

7月5日公開

中国、東アフリカ編

世界を旅しながら『地球の歩き方』などに寄稿したり自主映画を制作したりするカメラマン・ライターの今野さん。撮影した写真を使って制作したポストカードは、旅の記憶を呼び起こすきっかけになります。

2

8月2日公開

旅行ガイドブックライター/カメ...

ライターやカメラマンとして、現地の人々や文化とどのように向き合うべきか? 『地球の歩き方』など、数多くのガイドブックで現地の声を届けるベテランの今野さんが、経験や年齢とともに移りゆく価値観をいま改めて見つめ直します。

3

9月6日公開

インドネシアの自然と観光

インドネシアでは国立公園でオランウータンを間近で見たり、象に乗ってジャングルを回ったりするツアーが人気です。一方で自然破壊が野生動物たちから居場所を奪い、観光向けに人間に飼い慣らされている現状も踏まえて、今野さんはガイドブックと報道の間で何をどう伝えるべきかを考えます。

4

10月11日公開

メキシコの日本人

世界を旅していると、やはり日本人がいる場所はどこかほっとするもの。メキシコの日本人宿で知り合ったレスラーのルチャ・リブレ(プロレス)を観に行ったり、フィルムを扱う雑貨店のご家族に招かれて日本食をご馳走になったり、メキシコでも日本人との色々な出会いがありました。

5

11月1日公開

欧州サッカー観戦ガイド

中田、中村、小野、稲本…日本サッカーが世界に羽ばたいた2000年代初頭、今野さんはサッカー観戦ガイドブックの記者としてヨーロッパで取材をしていました。国ごとに異なるファンの扱いなど、臨場感あふれる当時の様子を振り返ります。

6

12月6日公開

旅行と映画

学生時代は旅費を稼ぐために映画関係のアルバイトをしていたという今野さん。そして今、その旅行や取材で培った体験を元に映画を撮ろうと思ったのも偶然ではないかもしれません。世界を旅する今野さんは、これからどんな物語を映し出してくれるのでしょう。