Fujioka Nobuyo

インテリアエディター

インテリア雑誌『PLUS1LIVING』ハウジング雑誌『はじめての家づくり』などの編集長を経て、現在では『編集脳アカデミー』主宰として住宅や編集に関するセミナーやコンサルティングを行う。

連載中収納がラクになる家のつくりかた

4「こうしたい」という目的から収納方法を考える

こんにちは。フリーエディター&旅するブログの先生、「編集脳」アカデミー主宰の藤岡信代です。老舗出版社の編集者として22年、インテリア雑誌の編集長を5年務めていました。収納企画はお手のもの、なのに、自分のものはちっとも片づけられない(笑)。その理由を、片づけのプロの実例を取材しながらひもといています。

第2回第3回は食器というアイテムをとりあげ、「食器棚ではなく、引き出しにしまう」「一カ所にまとめるのではなく、使用頻度で分けてしまう」という、収納方法を紹介してきました。いずれも、「ふつうはこうする」という先入観や思い込みを外してみたら、もっと使いやすい収納のカタチが見えてきた、というお話でした。

今回は、ものにフォーカスするのではなく、「しまい方」に注目します。

“仕組み”にすると、考えずに行動できる

今回、取材にご協力いただいたのは、千葉県で活躍するライフオーガナイザーの北村めぐみさん。中学3年生を筆頭に3人の子育て真っ最中のワーキングマザーです。私が北村さんの収納術に目を奪われたのは、『ライフオーガナイズの教科書』の編集作業中のこと。「家事を効率よくこなすために、いろいろなもののしまい方が“仕組み化”されている!」と感じたのです。

たとえば、トップの画像の冷蔵庫の中をよくご覧ください。持ち手つきのプラスチックカゴや透明のトレーが整然と並び、「和食」「洋食」といったラベルがつけられています。これ、ひとつ、ひとつが用途別にまとめられているのです。

「和食」のトレーを出すと、こちらの写真の左側のような感じ。めかぶや納豆、つくだ煮など、和風の朝ごはんのときに食べるものがまとめられています。右のバスケットは、海苔やふりかけなど、常温で保存できる“ごはんのお供”。こうしてまとめておけば、朝ごはんのときにそれぞれを食卓に運ぶだけで、準備OK。仕組み化できているので考えずに行動できちゃう、というわけ。

洋食のときは、トーストに塗るバターとジャムがセットになっているのですが、ここまでは「うちもやっているわ!」というお宅も多いと思います。実は、わが家も、和食と洋食の朝食セットはトレーにまとめてしまっています。

北村さんのすごいところは、「目的別にまとめる」収納技が徹底されているところなのです。

こちらの写真は、どんな目的別収納だと思いますか?
左側のプラスチックカゴには、ポリ袋に強力粉、バター、砂糖、塩、スキムミルクがまとめて入っています。そう、ホームベーカリーで焼くパン種1回分がまとめられているのです。右側のプラスチックカゴは、パン種の在庫のストックです。

時間のあるときにストックを出して、1回分の材料を測り、ポリ袋にまとめておく。そのひと手間をかけておけば、夜ホームベーカリーにセットして朝食に焼き立てパンを楽しむことができます。「パンの焼ける香りで目覚めるのが憧れでもありました(笑)」と北村さん。

“仕組み化”を徹底すると、収納ってもはや「ものをしまう」だけではないんだな、と感じます。

手間を省くのは、丁寧な時間を楽しむため

北村さんに、手間を省く収納の“仕組み化”を考えた理由を伺ってみました。

「“手間を省く”というと、面倒なことや無駄なことをそぎ落とすメージがあるかもしれませんが、手をかけたい、向き合いたい、大事にしたい、楽しみたいなど本当にやりたいことにエネルギーと時間を注ぐために、それ以外のことは極力“省く”というスタンスです。
手間を省き、効率よく短時間でたくさんのことをこなし、毎日、分単位でスケジュールが埋まることは望みません。
物も情報も多く、周りの意図に翻弄されがちですが、「こうしたい!」「こうありたい!」と自分の想いや目的から考えていくと、意外とシンプルなことに気づきました。笑」北村めぐみさん

「こうしたい」ということから発想する収納法は、そもそも「想いと現実にギャップを感じたときに生まれた」と言います。お子さんたちがまだ小さく、片づけの仕事を始める前の専業主婦だったころは、ママ友や親せきを頻繁に自宅に招いていた北村さん。あるとき、みんなが楽しんでいる中で自分だけが準備や片づけに追われ、キッチンに立っている時間が長いことに気づきます。

「みんなと食事や話を楽しみたくて招いているのに……、これでは意味がない!」と感じた北村さんは、お客様にも思い切って準備から片づけまで手伝ってもらうことにしたのだそうです。

「どこに何があるのかわかりやすく配置し、すぐに使えるようにセットしておくことで、次からは何も言わなくても『勝手知ったる!』と手伝ってくれるようになりました。準備の段階からワイワイ盛り上がり、みんなも楽しそうだし、私も話に耳を傾ける余裕ができ嬉しかったのを覚えています」北村めぐみさん

の写真は家族分のカトラリーのセットとカップのセット。
必要なものがわかりやすくセットしてあるので、手の空いている人が食卓に運べば準備も早く終わります。さらに、手間を省くためにどんな工夫をしているのかを尋ねてみると、こんな答えが返ってきました。


「家の中のこと、特に家事を会社の業務に置き換えると、あらゆるところで手間を省くことができます。会社では無駄をなくして効率化することに一生懸命なのに、家の中はなぜかみんな無頓着(笑)。これが仕事だったらどうする?と視点を変えるだけで収納だって変わります。

1:セットにする
同じシーンで使うモノをあらかじめ下準備してセット収納するだけで、やろうと思ったときにストレスなく始めることができます。

2:保育園やファミレスを参考にする
誰でもできるようにハードルを低くし、限られた人数で効率的に運営する仕組みの宝庫です。

3:人の動きに合わせる
家族を上手に巻き込むためにも、毎日の習慣や行動に合わせて収納をつくるだけで家族が自然に片づけに協力的になります。

4:ラベルを貼る
「あれどこ?」「これどこ?」と家族からの問いかけにいちいち答える必要がなくなります。家族も使ったモノを元に戻せない原因のひとつにママだけモノのありかを知っているということがあります」北村めぐみさん

なるほど、「どこに何をしまうか?」だけでなく、「どうすれば効率的に、うまくいくか?」という視点を入れるのですね。仕事ならできるのに、家事だとやらない。という指摘は、ちょっと(かなり)耳が痛い(笑)。やればできること、他ではやっていることを、家事ではなぜか「こんなもの」と高をくくって工夫していないということはあるかもしれません。

人ごとにものを分ける、という考え方

家族も、遊びに来た親戚やママ友も、自然に手伝ってくれたり、片づけてくれる仕組み。参考になることが多い北村さん宅の収納ですが、私がもっとも感銘を受けたのは、実はこの写真です。なんだかわかるでしょうか?

これ、3人のお子さんたちの“おやつ入れ”なんです。キッチンの引き出しの中に、ウイークデーの5日分のおやつが、それぞれ一人分ずつ密閉容器に収められています。子どもたちは、好きなときに好きなだけ、ここからおやつを食べるという仕組みです。

おやつといえば、お母さんがどこか(子どもの手の届かないところに)まとめてしまっていて、「おやつ、ちょーだい!」と言えば出てくる……というイメージ。一人分ずつ分けて収納する、というのは、実は軽いショックでした(笑)。

どういった発想で生まれたのでしょうか?

「末っ子にはついつい甘くなりがちで、「今日はこれだけ!」とおやつの量を決めているにも関わらず、『もっとちょうだい!』とせがまれると、可愛さに負けてあげてしまうことが多くなっていたのです。

もちろん、他の子が一人でおやつを食べるときにも同じようなことがあったので、こんなことを続けていては我慢ができない子になってしまうし、親としての不平等感や一貫性のない対応に落ち込みを感じるようになっていました。

そんなとき、子どもたちが町内会のイベントか何かで駄菓子やゼリーがたくさん入った大袋を一人一つずつもらってきたのです。1回で食べきるにはあまりにも多すぎる量。子どもたちと話し合った結果、1週間分(平日)のおやつにするということになりました。

そのとき『これだ!』と思いましたね(笑)」北村めぐみさん

さらに、実際にこの仕組みを取り入れてみると、思っていた以上の効果が。どれから先に食べようか悩んだり、ときには3人で交換し合ったり。北村さんがおやつを出していたときより、実に楽しそうなのだとか。

「おやつBOXをとおして
・我慢すること
・管理すること
・調整すること
を子どもたちが身につけてくれたらさらに嬉しいです。

何より子どもたちとの押し問答がなくなり、不平等感や罪悪感から解放されたのが嬉しかったです。
おやつが入った小さな箱ですが、社会で生きる上で大切なことを教えてくれる宝の箱ですよ!(笑)」北村めぐみさん

「収納」「片づけ」という言葉のイメージからは、子どもたちがおやつを通して管理することを考えたり、お互いに融通し合ったりする姿はなかなか想像できません。ですが、一人分ずつ箱に分けて自分で管理するという“仕組み”として考えると、子どもたちの自主性を育むことや、お母さんのストレスを軽減すること、さらにみんなが気持ちよく過ごせることなど、たくさんのメリットが見えてきます。

収納や片づけのことを深く知れば知るほど、「家事って、めちゃくちゃクリエイティブ?!」という想いが強くなってきました。(あ、まだまだ自分はクリエイティブを目指したい!という域ではないのですけれど(笑))

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