coeur ya.

彫金作家

シンプルだけど存在感のあるデザインが人気の彫金アクセサリー作家。
1998年から始め、5年の活動休止を終え2012年から活動を再開しました。

連載中人は聞きたいと望んでいないかもしれない

2coeur ya.が生まれた日

なんとなく、なんとなく、でも

子供のころから教育番組の刀鍛冶や鍛金の職人、吹きガラスの職人を紹介するコーナーが凄く好きでした。熱で真っ赤に溶けた金属やガラスを、叩いたり引き延ばしたりして加工するシーンが何故か大好きだったんです。今になって思うと、たぶん「彫金」に引っかかった理由はそこからだったんだと思います。

ガスバーナーで熱して金属同士を接着するロウ付け作業

高校では二年生からコースを選択できたので美術コースを選びました。特に美術が好きというわけでもないけれど得意な方で、美術の先生が美術コースへ来るよう誘ってくれたこともあり、なんとなくの美術コース。三年になり進路の事を考えるときも「高い授業料を払って貰って行くほど学校へ行って学びたいこともない」と受験はしないつもりでした。でもある日ふと美術コースの教室に用意されていた美術系の学校のパンフレットをパラパラめくっていると金属を加工してアクセサリーを作る「彫金」の科目があるのを見つけてしまいました。

学校の課題で作ったバングル

なんとなく選んだ美術コースで、なんとなく開いた学校のパンフレット。でもどうしてもその学校へ彫金を学ぶ為に行きたくなってしまったんです。

親には「受験せーへん言ったからお金貯めてない!」って叱られながらも受験させてもらい無事「奈良芸術短期大学」の、彫金を学べる工芸デザインコース(現・クラフトデザインコース)へ通えることになりました。短大生活は授業も遊びも毎日がとにかく楽しくて、そんな毎日の中で卒業したら就職ではなく自分で考えたものを作りたいと漠然と思うようになっていました。

はじめに決めたルール

活動当初に作っていた指輪。当時も今も四角がモチーフのものが多い。

学校を卒業してから少し経った頃、縁あって訪ねた大阪南船場の「mint」という雑貨店(現在はない)で彫金を学んだことを話すと委託販売してもらえる事になりました。ただその時点では彫金作業で重要なガスバーナーなどの道具を揃えてなくて、話が決まってから慌てて道具を揃えるという・・いまではとても出来ない無鉄砲な行動から活動は始まりました。

そして最初の取扱店が決まり、いよいよ1人で活動をするとなった時にひとつルールを作りました。それは「他の人が作る彫金アクセサリーは見ない」ということ。人と違うものを作りたい。でも見てしまうと気付かないうちに影響されることもある。それなら出来る限り「他のアクセサリーは見ない」という単純な選択でした。

あと心のどこかで、この活動は自分以外の人には必要のないことなのだと、やらなくてもいい事をしている、という負い目のようなものがあります。親からしてみれば卒業後学んだ事を活かして就職した方が安心だったろうし、今は結婚して子供もいますが外へ働きに出た方が収入は安定しているかもしれない。その中で「自分が考えたものを作りたい」とわがままで始めたのに、人と同じものを作るのでは全く意味がない。活動を始めて18年経ちますが「人と違うもの」じゃないと作る意味がないという、その気持ちは変わりません。

coeur から coeur ya.へ

coeur ya.のロゴを入れて貰った活版印刷の箱

取扱店が決まって慌てて決めた事がもうひとつ。
ブランド名をどうするか聞かれ、とっさに「coeurにします!」と答えました。

当時、通い詰めていた地元の図書館で色んな国の辞書から気になった単語をノートの控えるのが趣味で、綴りのバランスが気に入って唯一記憶していたのが「coeur」だったのです。ただ綴りが気に入っただけなのでノートには意味も読み方も何語かも書き留めておらず、かといって調べる訳でもなく(今みたいに簡単にネット検索も出来ないし・・)、そこから数年は意味も読み方も何語かも知らないまま「coeur」という名前を使っていました。

何かのきっかけで「coeur」はフランス語の「心」という言葉で「クール」と読むのを知った頃には、元々ある言葉という事もあり「coeur」という単語の入ったブランドやお店を見かけるし、なんとか他にはない名前にならないか・・という気持ちが強くなってきていました。ただ使って来た「coeur」にも馴染みがある。考えた末に「coeur」のあとに「ya」をつけることにしました。私の下の名前の頭文字と最後の文字を取って「ya」。これでやっと自分だけの名前「coeur ya.(クール ヤ.)にすることが出来たのです。馴染みのない響きなのでもの凄くよく名前を呼び間違えられますが、気に入っています。

余談。今はSNSなどを利用していることもあり、遮断したくても情報がどんどん流れ込んできて「他のアクセサリーは見ない」というのは難しくなってきました。世の中には格好良いアクセサリーは沢山ある。ただ自分も決まりを作ったころより成長してる(と思いたい)ので、見て影響を受けて作りたいものが揺らぐようなことはない(と思いたい)です。でも他の彫金アクセサリーを見ないという習慣が今でもどこかにあります。

連載中人は聞きたいと望んでいないかもしれない

1

12月20日公開

自分の言葉で何かを伝えるのはと...

幾何学模様のシンプルな形状。銀や真鍮の素朴な風合い。coeur ya.(クール ヤ.)のアクセサリーが持つ素朴で詩的な魅力の裏側には、これまで語られることのなかったストーリーがありました。

2

1月31日公開

coeur ya.が生まれた日

なんとなく、なんとなく、でも導かれるようにして進んだ先には、子どもの頃に心惹かれた「彫金」の世界がありました。彫金を仕事にするにあたって、初めに決めたふたつのこととは…。

3

2月28日公開

個展をひらくということ

2016年に初めて開催したギャラリーでの個展『鉱物標本』。テーマは「鉱物の結晶の形をしたアクセサリー」。当初は個展には消極的だったものの、作品の見せ方を模索する中で、声を掛けてくれたギャラリーや多くの人の協力もあり、coeur ya.さんの意識は徐々に個展の開催に向いていきました。

4

3月28日公開

原動力としての建築

立体的なアクセサリーのアイデアが生まれる原動力は意外なところにありました。年に一度の東京旅行で見るのは「建築」。良書『いいビルの写真集』を片手に、歴史的建築物から通りすがりの名もないビルまで、街には「何か作らないと!」と思わせる刺激があふれています。

5

4月25日公開

coeur ya. 作品集

定番品から展示会ごとのコンセプトに沿って作られたものまで、最近の作品を写真で振り返ります。ひとつひとつは一見無機質な幾何学模様のアクセサリーが、いくつも並べてみると様々に形を変えながら有機的に変化しているように見えます。