coeur ya.

彫金作家

シンプルだけど存在感のあるデザインが人気の彫金アクセサリー作家。
1998年から始め、5年の活動休止を終え2012年から活動を再開しました。

人は聞きたいと望んでいないかもしれない

3個展をひらくということ

はじめての個展

carre hairが入るのは螺旋階段が素晴らしい1957年築の西谷ビル本館

「1人で作って、1人で準備して、私1人の力でお客さまに来て貰うなんて無理無理」

そう思って以前はずっと個展をする気がありませんでした。でもそんな私に南堀江のcarre hairギャラリーのオーナーさんが何度も「ここで展示しませんか」と声を掛けて下さって、少しずつ「個展」を意識するようになりました。

第1回目で書いた「身につけにくいオブジェも何とか世に出したい!」という気持ちもだんだん強くなっていたので、お店に並んだ沢山の商品の中の1つじゃなくて、個展という限られた空間で作品としてなら「オブジェを身につける」とう感覚を受け入れて貰えるんじゃないか、1人1人のお客様にも作品の取扱いに注意が必要だと案内しやすいんじゃないかと。

個展「鉱物標本」

無数の立方体で構成される岩塩(等軸晶系)

そんな気持ちで、ちょうど1年前の2016年2月の終わりに、初めてギャラリーという大きなスペースを借りて個展をする決心しました。でも、さて。個展のテーマはなんにしよう。少し前の東京旅行で行った博物館「インターメディアテク」で見てから興味が出ていた鉱物の造形。自然のままで人の手が加えられていないのに綺麗な立方体だったり正八面体だったりする。その鉱物自体の形がいいので、アクセサリーとして別の形に変えるのはもったいない。もともと幾何学をモチーフにする事が多く、カットされた宝石の形を銀の線で立体的に組み立てた商品も作っていたので、その手法で「鉱物を使ったアクセサリーではなく、鉱物の結晶の形をしたアクセサリー」を作るという、個展のテーマが決まりました。

個展のタイトルは『鉱物標本』。

鉱物の結晶について

一番真ん中の斧石の図はここまで書いたのに間違っていて立体にすることが出来ませんでした…

黄鉄鉱の結晶を模したピアス

ここで少し鉱物の結晶について本で読んだだけの私の下手な説明を。全ての鉱物は七つの結晶系に分ける事が出来る(そうです)。正方晶系、六方晶系、等軸晶系・・などなど。例えばダイヤモンドの結晶は等軸晶系に分類され正八面体に形成されることが多い(そうです)。もちろん自然の環境によって条件がかわり、すべてが正八面体に形成されるわけではない(そうなのですが)。

面ではなく線で作っていくので展開図は役に経ちません。結晶の辺を頭の中でパーツを決めて分解して行き、そのパーツをどの手順で立体的に組み立てるか考える。線が細いのでガスバーナーの火を当てすぎてしまうと線が溶けてしまうこともあるし、火を当てた時に先にロウ付けした箇所のロウも溶けてバラけてしまう・・そのリスクが一番少ないパーツ分けと組み立て手順でないといけません。それが出来たら方眼紙に立体に作るための情報を図面を書くのですが私に必要な情報しか書いていないので、きっと正しい製図の書き方ではないのです。でも、これがあるととても立体が作りやすくなります。

沢山の人の手を借りて

左:昔ながらの活版印刷で刷られた箱は大枝活版室さんでオリジナルを作っていただきました。デザインはMARBLE&Co.さん
右:レビ沸石という鉱物の結晶を模したピアス

carre hairギャラリーでの個展『鉱物標本』のDM

準備を進める間に分かったことがありました。作品は1人で作ってますが、個展のDMと作品を納める箱はMARBLE&Co.さんがデザインから発注まで全てして下さったし、定番品の取扱店さんは個展の準備で商品の納品が滞っているのにお客様へ個展のDMを渡して宣伝してくれている。carreさんは美容室の営業中に作品を一足先に身につけて宣伝して下さり・・「行くよ!」「お互いがんばろう」と周りの人が応援してくれる。

1人で作っているけど、沢山の人の手を借りて準備して、沢山の方に応援してもらってお客さまに来ていただく。全然1人ではありませんでした。そして色んな方の協力のお陰で、たった2日間の個展には想像以上の沢山の方に足を運んでいただき無事終了!鉱物標本は作るのが楽しくて楽しくて、まだまだ作ってみたい鉱物の結晶もあるし、また、出来れば大阪以外の色んな土地でも2回、3回と続けていけたらと思っています。

あとずっと後ろ向きだった「個展」をすると腹をくくったからなのか、そこからイベントや企画展のお話がトントンと舞い込んできて・・結局その1年は駆け抜けるように沢山の制作・経験をさせて貰うことになりました。そんな中で作った作品は別の回で一気に紹介させて貰います。

『Maison du JAPON』に出店します

最後に告知を。商品の取扱店としてお世話になっているダイヤメゾン主催「世界へ羽ばたくMaison du JAPON」というマーケットが3月11日・12日に梅田イーマで行われます。錚々たる出店者さんが集まる中に恐縮ながらcoeur ya.も定番品の販売で参加させていただきます。

日時/2017年3月11日(土)12日(日)
時間/12:00~18:00
場所/E-ma 1階会場エントランス (〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1丁目12-6)
http://www.e-ma-bldg.com

人は聞きたいと望んでいないかもしれない

1

12月20日公開

自分の言葉で何かを伝えるのはと...

幾何学模様のシンプルな形状。銀や真鍮の素朴な風合い。coeur ya.(クール ヤ.)のアクセサリーが持つ素朴で詩的な魅力の裏側には、これまで語られることのなかったストーリーがありました。

2

1月31日公開

coeur ya.が生まれた日

なんとなく、なんとなく、でも導かれるようにして進んだ先には、子どもの頃に心惹かれた「彫金」の世界がありました。彫金を仕事にするにあたって、初めに決めたふたつのこととは…。

3

2月28日公開

個展をひらくということ

2016年に初めて開催したギャラリーでの個展『鉱物標本』。テーマは「鉱物の結晶の形をしたアクセサリー」。当初は個展には消極的だったものの、作品の見せ方を模索する中で、声を掛けてくれたギャラリーや多くの人の協力もあり、coeur ya.さんの意識は徐々に個展の開催に向いていきました。

4

3月28日公開

原動力としての建築

立体的なアクセサリーのアイデアが生まれる原動力は意外なところにありました。年に一度の東京旅行で見るのは「建築」。良書『いいビルの写真集』を片手に、歴史的建築物から通りすがりの名もないビルまで、街には「何か作らないと!」と思わせる刺激があふれています。

5

4月25日公開

coeur ya. 作品集 – phenomena

定番品から展示会ごとのコンセプトに沿って作られたものまで、最近の作品を写真で振り返る「phenomena編」。ひとつひとつは一見無機質な幾何学模様のアクセサリーが、いくつも並べてみると様々に形を変えながら有機的に変化しているように見えます。

6

5月22日公開

coeur ya. 作品集 – philos...

前回自らセレクトした自作にひとつひとつコメントを添えた「philosophy」編。語られることを待っていたcoeur ya.のアクセサリーに込められた様々なエピソード。「人は聞きたいと望んでいないかもしれない」最終回。