nuri candle

キャンドル作家

1978年福岡県生まれ。自然から受けるインスピレーションを蝋燭に込めるように制作するキャンドル作家。『鉱物キャンドルのつくりかた』など著書多数。

連載中キャンドルに彩を灯して

オーダーメイドの日(2018年1月19日-21日)

5お薬としてのキャンドル

生きている命をキャンドルに

本格的にアロマキャンドルに取り組もうと思ったのは、なにかの本の中で「精油は瓶の中でまだ生きています」という一文を見つけた時からでした。まだ生きている命をキャンドルに入れることができれば、その命を求めている人がきっといるんじゃないかなと思いました。

火をつけると蝋と一緒にアロマ成分が揮発して香が広がります

例えば、野菜やお肉などを調理して口から食べる、その食べたものがその人を作っていく。だからお料理を提供する人はその人の体も作ることになる。その一連の流れがとても羨ましいと思った時がありました。「おいしくなーれ」と気のようなものを込めるとその気持ちまでもが食べ物に入っていく。なんだかいいなと思います。キャンドルでもそういうことができないかなと探していた時に先の言葉に出会いました。

精油は紀元前から治療に使われていたと知って、精油の効能を知れば知るほど【お薬のようなキャンドル】が作れたらと夢が広がりました。香りと灯す火で使う人のそばで植物たちがそっとささやくようにその人に寄り添ってくれたらいいなと思ったのです。ホロスコープなどでもその人のオリジナルのブレンドを作れることを知って、香りの可能性にわくわくしています。

6%の精油

天然由来の精油はエッセンシャルオイルと呼ばれ希少で高価。

アロマキャンドルを作る時に【溶けた蝋の中に精油を6%ブレンドする】ということがどれほどのことなのか作るまではさっぱりわかっていませんでした。それ以下だと香りが弱いし、それ以上でも多すぎて火だるまのようにキャンドル全体が燃えてしまって慌てたこともありました。

そして6%という量ですが、グラム換算にすると100グラムのキャンドルに対して6グラム。それは精油の5mlの小瓶では足りません。今まで香りづけに精油を垂らしていた量とは全然違ったことを知って驚きました。高価すぎる…!でも諦めたくなかったのです。

合成の香料だと10分の一くらいの価格で作ることができるけど「生きている命」を入れることができないのです。ここは腹をくくってやろうと決めました。

絵付けの行程

まるでこれ自体が彫刻作品のような石膏型

特別な香りの特別なキャンドルに何か綺麗な絵で装飾できないかなと思い、刺繍のように一針一針縫ったような模様にできたらと石膏を彫って型を取ってみたところワックスの質感とすごく合い、絵具ののりも良かったのでこれで進めることになりました。作り出すと、彫刻のほうもだんだん上達して細かい線も彫れるようになり、絵具の筆遣いも慣れてきました。

彫刻よりも彫刻的、絵画よりも絵画的なnuri candle

彫ることも色を塗ることもとても楽しく、模様のアイデアもどんどん出てくるので、夢中で作っている感じです。キャンドル作りの工程では、作業台に立って流し込み、成形したりして大半が過ぎていきますが、このタイプはじっくり座って絵付けをするという工程が加わり、ひとつひとつに向き合うことができてとても嬉しかったのです。効率を求めてたくさん作る日々をそろそろ止めにしたかったのです。

次回、最終回ではどんな風に作ることに向き合うか、そんなことを綴っていけたらと思います。

オーダーメイドの日(2018年1月19日-21日)

連載中キャンドルに彩を灯して

1

8月29日公開

福岡に帰ってきた

京都、そして地元の福岡へと活動の拠点を移しながら、自然をモチーフにしたキャンドルを作るnuri candle。どこか懐かしく、でも見たことがないような新しいスタイルのキャンドルはどのように生み出されているのでしょうか?注目を集めるキャンドル作家の魅力に迫ります。

2

9月26日公開

京都で過ごした時間

父親の転勤を機に引っ越した京都。四季折々の美しい自然や文化に触れながら、生きていることの実感と自己表現に対する葛藤のあいだでひたすらキャンドルを作り続けた日々は、充実した創作活動の時期となりました。

3

10月31日公開

もみじ市という魔法

求められるものを作らなくてはいけないというプレッシャーから解放してくれたのは、多摩川の河川敷で開催される「もみじ市」への出店の誘いでした。一ヶ月前から準備を始め、集中して自分の作りたいものを作る時間は、nuri candleにとって何よりのギフトとなりました。

4

11月28日公開

鉱物キャンドル

古くなった蝋燭を砕いてみると、結晶化した欠片が鉱物のように見えた…。そんなきっかけで繋がったキャンドルと鉱物の世界。鉱物をこよなく愛した宮沢賢治の詩集を読んだり、漫画『宝石の国』のキャラクターの公式イメージキャンドルを作ったり、ついには鉱物キャンドルの本を執筆したり。nuri candleと鉱物の出会いから生まれた神秘的な鉱物キャンドルの数々をご紹介。

5

12月26日公開

お薬としてのキャンドル

「精油は瓶の中でまだ生きています」この言葉から生まれたのがnuri candleのアロマキャンドル。火を灯すと精油の生きた効用が広がる、まるでお薬のようなキャンドルです。そんな特別なキャンドルが、美しいレリーフに覆われて特別な空間と時間を作り出すことは言うまでもありません。