Arita Masafumi

japonica izumonesia graphicc 代表

未発掘の同時代フォークロアをスケッチして布や紙に表現。・・美術大学をはじめとする様々な教育機関で後進の育成に携わるなか、独自のテキスタイル図案で大衆文化に絵心を添えている。

イズモネシアのテキスタイル

2Textiles & Objects – 都市生活のなかでの新しいフォークロア表現

左『トリコ(バンブー)』:竹をモチーフにトリコロールカラーで描いたものでセブンチェア(ヤコブセン)等に展開  
右『花と月』:「ジュニアそれいゆ」のオマージュとして描いた柄。ワンピース:テキーラシスターズ  
写真:Kohei Take  

和のモチーフをミニマムに再現

はじめてテキスタイル作品を発表したのは2001年初夏のこと。国内外の先鋭的なクリエーターを紹介していたE&Yギャラリーのお誘いで、それまで描きためていた図案をお披露目する場をいただきました。
続いて表参道のSpiral × 東京デザイナーズ・ブロック2001で本格的なリリースを行い、BEAMSIDÉECIBONEと紹介の場を広げていきます。

そのとき発表していた『New Esperanto Label』のテキスタイルモチーフは、北欧インテリアブームや日本の伝統手工芸の見直しに先駆けて、和のモチーフをミニマムに再現したもので、その後も、ほぼ日刊イトイ新聞のほぼ日ハラマキに起用していただくなど、暮らしに寄り添う図案として親しんでいただいています。

持続可能な継承文化

『ウズラの親子』
「育み」や「継承」を意味するIzumonesiaのなかでもシンボリックな意匠
左 ガラス造形:奥野美果/右 2007年にIzumonesiaシリーズで発表した連続柄

そのなかでも今日にいたるまでシンボリックに扱っているのが『ウズラの親子』の図象です。はじめは「陰・陽」「育てること」「伝えること」「宇宙の似姿としての私」などの意味を込め、後に「DNA」「持続可能な継承文化」といった意味合いも含めた反復柄として再発表しました。

この図案は現在もIzumonesiaの代表柄として、奥出雲の斐伊川和紙に刷ってギャラリーに展示するほか、ハンカチや手ぬぐいをはじめ、食器類にプリントしたりと、様々な生活用品に展開しています。

100年続くなにかがあれば、それは伝統になる。

『エスペラント』エスペラント語をドローイングしたテキスタイル
画像:digmeout04より

New Esperanto Labelというネーミングには、エスペラント語へのオマージュが含まれていて、「100年続くなにかがあれば、それは伝統になる。」という言葉をエスペラント語で記した布も同時に発表しています。

黒い帽子をかぶった赤い伯父さんのキャラクターも、言葉の壁を取り去ることで恒久平和の実現を目指した、エスペラント語の産みの親であるザメンホフをモデルにしています。

テキスタイルとプロダクトの新しい関係

上:『ネルチェンコフ』エスペラント語の産みの親であるザメンホフをモデルにしたキャラクター/右:コンバースの2005 ~ 2006年コレクションより
写真 Kohei Take

これらの連作を発表した当時は、現在ほどテキスタイルへの関心が広まってなく、マリメッコなどの布地も、業界内で再注目されつつも一般にはあまりよく知られていませんでした。インテリアやファッションの業界でも、プロダクト先行のテキスタイルがほとんどで、ひらめくままに布地を作り、様々なジャンルと共同制作を広げていくスタイルが、新鮮に映っていたようです。

その頃から、様々なブランドやメーカーからもオファーをいただくようになり、コンバースのシューズ等、New Esperanto Labelの図案が海外にも広がっていくきっかけとなりました。

新しいフォークロア感覚を衣・食・住へ

『アフガンラグ』
長野県松本市にある世界の手仕事屋サムサラ・渡辺純氏の仲介による現地制作

JOURNAL STANDARDによるフェア・トレードの企画では、アフガンラグに図案提供しましたが、伝統的な色合いや素朴な織りの風合いに惚れ込んで、その後もラグマットの連作を発表しています。

15年経った今でも、これらの図柄を生活に添えてくださっている方々に出会うことがあります。「新しいフォークロア感覚を布に描いて衣食住へと広げたい!」という初期の想いは、その後も沢山の人たちの支えのなかで育てていくことが出来たと感じる瞬間です。

その後も、代官山のテキスタイル専門店 coccaさん、三宿のハンカチ専門店 H TOKYOさんで、新しい布表現を続けさせていただいております。

その制作物は、都市部のセレクトショップばかりではなく、アトリエのあるsmall village しぜんの国保育園のような、子供たちを中心にした生活の場でも、アートワークやワークショップなど様々な形で広がりつつあります。

イズモネシアのテキスタイル

1

3月8日公開

Izumonesia – 出雲のDNAが...

シンプルな色と線が織りなす図案の中にどこか懐かしさを感じる有田昌史さんのテキスタイル。作品を生み出すためのインスピレーションとなるのはその土地に根ざした心象風景。ご自身の出身地である島根県出雲に伝承される文化や神話が色濃く反映されています。

2

4月12日公開

Textiles & Objects – 都市...

テキスタイルがまだ現在のように固有の芸術的地位を確立していなかった頃、有田さんの生み出す作品はファッションやデザインの世界で注目され、「新しいフォークロア感覚を布に描いて衣食住へと広げたい!」という初期の想いが結実していきました。

3

5月18日公開

small villageの色と形

現在は東京都町田市にある「しぜんの国保育園」内のsmall villageを拠点にしている有田さん。「子どもの成長、発達に寄与する人はすべて保育者」という園の基本理念に賛同し、自然豊かな環境で子どもたちに囲まれて創作活動を行っています。

4

6月18日公開

ものづくりとコミュニケーション

自ら描いた図案が暮らしの中の様々な場面で活用されること、有田さんはそこにテキスタイルの魅力を見出します。また、その制作過程において多くの人々が関わり、ものづくりを通じたコミュニケーションが生まれることもテキスタイルの醍醐味です。

5

8月9日公開

カンバスとしてのハンカチーフ

新しい表現活動の場として有田さんが注目するのはハンカチーフ。そのシンプルな形状と、安価でリスクの少ない素材は、テキスタイルの世界にポップでバリエーションに富んだ表現の広がりをもたらしてくれます。

6

9月13日公開

100年後に残るもの

100年後の未来に残るもの…。有田さんは、変わることなく親しまれる普遍的な魅力を持った未来のテキスタイル表現に思いを馳せます。いつか最新のテクノロジーを使った画期的な新素材が開発されたとしても、テキスタイルの役割は形を変えながら残り続けるでしょう。