KAMAKULANI Editorial Desk

編集部

「いつもとは少し違う選択を。」をキーフレーズに、昨日とは少し違った新しい自分を発見できるような情報をお伝えするWEBマガジン「KAMAKULANI」の運営デスクです。

暮らしと音楽

三嶋さつき ピアノポスター by carbon 限定販売

3音楽を聴く環境

KAMAKULANIの1周年記念企画としてお届けしている「暮らしと音楽」、今回で最終回です。第3回のテーマは「音楽を聴く環境」。皆さんは普段どんな風に音楽を聴いていますか?お相手はKAMAKULANI編集部のアベさんです。

レコードやカセットテープが再ブーム!?

CDが売れなくなっているというニュースをよく見かけます。実際、20年前と比べると日本のCDの売上は1/3程度に落ち込んでいるそうです。今やご家庭にCDプレーヤーを持っていないという方も少なくないかもしれません。デキさんは今年新しくCDを買いましたか?

私は絶対的にCD派デス。ジャケットのデザインも音楽と連動して見るし、好きなモノの「カタチ」を手にすることで、「自分が持ってる」ってコトを実感したいんです。昭和なんですかね~?笑。

松任谷由実「宇宙図書館」

今年買ったCDはこんな感じデス。松任谷由実『宇宙図書館』(女子のたしなみとして)、Chara『Junior Sweet(25周年記念盤)』、サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』、ホセ・ゴンザレス『Veneer』。最近はイベントやライブに行った帰りに買うことが多いです。

ホセ・ゴンザレス、先日来日しましたね。僕が今年買った中で印象に残っているのは、ビヨンセの『Lemonade』、ミツキの『Puberty 2』、あとは宇多田ヒカルの『Fantôme』が素晴らしかった。

宇多田ヒカル「真夏の通り雨」

ビヨンセや宇多田ヒカル、私も車でよく聴いてますよ。ビヨンセの『Lemonade』は、普段は全然音楽の趣味が違う兄と一緒に車に乗ったときに「コレ、誰?」と聞いてきたから驚きました。今回のアルバムは「コレ、ホンマにビヨンセ?」って感じがしました。宇多田ヒカルは私の2016年の秋を制しました。笑!

日本でもアメリカでも、一流のミュージシャンと一流のエンジニアが集まって作られた音楽はやっぱりスゴイ!好き嫌いとは別の次元で聴けますね。
それでも1枚のCDの金額ってほとんど変わらないから不思議といえば不思議ですよね?(洋服だったら一流デザイナーだったりイイ素材で作ればそれだけ値段は跳ね上がりますもん)でも、一流揃いじゃないバージョンでもそれにはそれの良さがあってグッときますもんね。音楽はホントに深い!
アベさんは年に何枚ぐらいCDを買うんですか?

多いときで年に200枚ぐらいアルバムを買います。最近ではCDとアナログ・レコードが半々ぐらいですね。基本的にはレコードで手に入るものはすべてレコードで買います。今時レコード?と思う方もいると思いますが、特に海外では多くの作品が今でもレコードで発売されているんです。CDの売上低迷に反比例して、レコードの売上はここ10年間で3倍になっているそうですよ。

ポートランド北部にある「ミシシッピ・レコード」
「全米レコードショップ・ベスト10」に選ばれ、マニアも納得の品揃え

200枚!!ちょっと多すぎませんか?

まぁ、少なくはないですね…。
2007年にアメリカで「レコード・ストア・デイ」というイベントが始まり、これはミュージシャンが限定版のアナログ・レコードを提供し、音楽ファンにレコードショップに足を運んでもらう、という趣旨のイベントです。現在では世界中に参加店舗が広がり、日本でも開催されています。
そこから派生して、2013年には「カセット・ストア・デイ」というイベントも生まれ、カセットテープも再ブームの兆しなんです。東京の中目黒には「Waltz」というカセットテープの専門店までできました。

音楽を聴く環境がココ20年でガラッと変わって、その過程で省かれたモノが戻ってきたんですね。車でもあえてミッション!という人もいますし、私も昔ながらのマニュアル車の楽しさと、最近の高性能な車の便利さと、どちらにも魅力を感じるのでわかるような気がします。結局のところ、CDが売れなくなったというより、もう一度選択肢を見つめ直してみたら、CDに魅力を感じない人だらけになっていたってことなんですね。

そうですね。もちろん今もっとも主流なのはiTunesなどのデジタル・メディアですが、もともと音楽好きのあいだではCDよりもレコードの方が音質が良いというのが定説で根強い人気だし、これはもう趣味の領域ですが、物理的に大きいレコードの方が所有欲を満たしてくれる、ということもあると思っています。大判の写真集なんかよりも大きいですから、手に持ったときの満足度がぜんぜん違うんです。

モノとして手に取ったときの楽しさやワクワク感は大切ですよね。実は私もアベさんに勧められて最近レコード・プレーヤーを買ったクチです。今でもずいぶん色んな種類のプレーヤーが売ってるんですね。一時期は「レコード針が手に入らないから」という理由で家にある古いプレーヤーを処分した、なんて話もよく耳にしましたが。

Amadana「SIBRECO」

SONYやPanasonicなどの大手も積極的に新商品を発表していますし、むしろ選択肢は増えていると思います。デキさんが購入したAmadanaのプレーヤーは、デザイン家電メーカーのAmadanaとレコード会社のUNIVERSAL MUSIC JAPANの共同開発で、クラウドファウンディングで開発費用を募るなど、SNS時代のレコードプレーヤーとして話題になりました。スピーカー内臓なのでコンセントを繋ぐだけでレコードを聴けるし、USBでパソコンに接続してデータを取り込むこともできたり、便利そうですね。何よりオシャレでかっこいい。

レコードプレーヤーのオススメをアベさんに訊いたらAmadanaが候補に挙がったんで、なんの迷いもなくポチっとしました。1番最初に針を落としたのはポートランドで聴いたArcade Fire『Funeral』でした。懐かしいアナログ感にゾワッとしました。住まいの中にこの機械的な動きがあるのがステキ過ぎて(とうとう扇風機の羽まで回らなくなりましたもんね)、フクダ・ロングライフデザインの完成見学会のディスプレイ用に買ったばかりのプレーヤーを持って行ってレコードを回したら、チビッコ達の興味津々ぶりにビックリしました。私たちが子供の頃に資料館みたいなところで蓄音機を見たような、そんな感じかもしれないですね。

やはり木の家にレコード・プレーヤーはよく似合う。性能面ではしっかり最新の技術を使いつつ、体験としての豊かさは普遍的なスタイルを踏襲する、まさにフクダ・ロングライフデザインの家と同じですね。

笑、うまいこと言いますね。
KAMAKULANIの読者層はレコード世代の方も多いと思うので、家に古いレコードが眠っているという方は、引っ張り出してきてもう一度楽しんでみてはいかがでしょうか?

音楽が生き返るとき

7インチのシングルレコード、通称ドーナツ盤

余談ですけど、日本語では音楽を流すことを「再生」といいますよね。これはなかなか味のある表現で、それこそ眠っていたレコードにもう一度針を落とすことで「音楽が再び生き返る」わけです。でも英語では単純に「PLAY(演奏する/音を鳴らす)」です。なぜ英語と日本語で異なる表現になってしまったのでしょう?
これは僕の推測ですが、オーディオ用語が日本に入ってきたときに解釈を誤ったまま伝わってしまったのではないかと思っています。カセットテープがA面からB面に自動で切り替わる機能を「オート・リバース」と言いますが…。

オート・リバース!懐かしい!
中学生の頃はオリジナルテープを作って、無音部分を少しでも短くしてA面からB面にスムーズに切り替わるように、録音したテープをハサミで切って縮めたり、色んな細工をしましたよ。そのタイミングがなかなかむずかしい!その技を極めてきた頃には無音部分が自動で早送りされてB面に切り替わるようになって…腕の見せ所が奪われました。

へー!それは初耳です。まるでレコーディング・スタジオのエンジニアですね。消費者のそういう豊かな発想力が、あの時代の日本の家電の品質向上に繋がっていったのかもしれません。
オート・リバースというのは、直訳すると「自動再生」です。英語では動作を停めることを「Kill」と言うことがあって、日本語だと「Kill」は物騒な言葉に聞こえますが、英語では「Kill the engine(エンジンを止める)」なんて表現もあります。だから、その対義語として「Birth(生まれる)」という言葉が「動き出す」という意味で使われる。そこに接頭語の「Re(もう一度)」を点けて「Re-birth(リ・バース=もう一度動かす)」と表現したところ、日本では広い意味で音楽を流す行為全般に当てはめてしまったのかな、なんてことをぼんやり考えています。

とつぜん英会話教室が始まって思わず睡魔がきました、、、なるほど!以前、車のバッテリーが上がらないように(旧車なんで)「キルスイッチつけましょか?」って車屋さんに薦められて取り付けたのですが、頭の中では「切るスイッチ」でした。正しくは「kill switch」だったんだ~。笑!
そもそも、A面とかB面とか…若い方にはまったくちんぷんかんなお話でしょうね…。でも、そういう音楽用語のひとつひとつにも、私たちと音楽の深い関係性が表れているような気がします。

はじめてのレコード、はじめてのCD

話が少し脱線しましたが、今回は「音楽を聴く環境」というテーマなので、音楽を聴くための環境がどのように変化してきたかについてお聞きしたいと思います。先程から何度も話題に上がっているとおり、僕もデキさんもレコード、カセットテープ世代です。初めて買ったのはやはりレコードですか?

いや、CDですよ!っと言いたいところですが、モチロン、レコードです。「だんご三兄弟」と言いたいけど、「およげたいやきくん」ですよ。子供の頃は回転数を違う方でかけて大笑いしながら聴くのもレコードの醍醐味でした。33RPMとか45RPMとか、音楽に通ずる単語にはなんだかカッコよさを感じますね。

レコードには指定の回転数があって、一般的にはLP(アルバム)が33回転、EP(シングル)が45回転でした。でも時々33回転のEPなんかもあって、早い回転数のまま再生すると妙に高い声になったりするんですよね。

TM NETWORK「Be Together」

僕は子どもの頃に自分でレコードを買った記憶はないんです。家にはザ・ビートルズとか山口百恵とかのレコードがありましたが、自分のお小遣いで音楽を買うようになったのはCDになってからでなので、そういう意味では第一次CD世代なのかもしれません。

レコードは、隣町のレンタルショップで借りてきて、カセットテープにダビングしていました。光GENJIとか、マイケル・ジャクソンとか。カセットテープはレコード世代と初期CD世代のどちらにも重なっていましたね。

CDが普及してからは、当時好きだったクラスの女の子の影響でTM NETWORKの『humansystem』というアルバムを買いました。

レベッカ「Nothing To Lose」

私はREBECCAの『Nothing To Lose』だったと思います。当時心斎橋筋にOPENしたばかりのレコードショップで買いました。仲のイイ友達がCDプレーヤーをイチ早く手にして、そのデッキを私の家に持ってきてウチのラジカセにつないで初めてのCDを体感しました。っで、我慢できずにお年玉貯金を崩してCDコンポをスグに買いました。

カセットテープで音楽を贈る

carbonでクリスマスに配布したカセットテープ

カセットテープが画期的だったのは、やはりSONYのウォークマンの存在あってこそでしたね。鞄に音楽を入れて外で聴ける、という。レコードでは考えられなかった音楽との新しい関係が生まれたわけです。

実は僕は実感としてウォークマンの衝撃を覚えていなくて、物心ついたときには既に必須アイテムだったような気がするのですが、デキさんはいかがですか?

私は中学生でしたね~。校区内でしたけど引っ越しをして山を一つ越えたので自転車通学になって(禁止でしたけど、、)その時にウォークマンを着けて学校に行ってました。学校に着くのが同じ時間なのに早いんデス!わかります?音楽があるとホントにアッと言う間に学校ですよ。それに、自分がCMに起用されたんじゃないかと思うくらいPVの主演気取りになれました。いつもと同じ風景の中で不思議な感覚になったのを今でも覚えています。

僕も学生服の内ポケットに隠してウォークマンで音楽を聴きながら通学してましたよ。みんなやることはだいたい同じなんですね。
もうひとつ、カセットテープが魅力的だったのは、自分で音楽をセレクトしてプレゼントする、というような楽しみ方ができたことですよね。好きな曲を集めてダビングしてミックステープを作ったり。

John Lennon「Happy Xmas (War Is Over)」

自分でセレクトしたカセットテープにラベルもお手製にしてプレゼントするのはよくしました。今みたいに簡単にダビングができなくて、手間暇がかかる作業でした。だから、もらったときはその制作時間も含めて手にしていたんでしょうね。

私は雑貨店「carbon」を1999年にOPENして、心にグッとくる贈り物をセレクトするつもりでお店を始めました。1周年のときに感謝のキモチを込めてカセットテープを作りました。ジョン・レノン「Happy Christmas War Is Over」、10分テープを探し出して。聴く機械がなくてもココに(カセットテープ)音楽があるって重みだけでイイ!って思いました。もちろんラベルもお手製デス。

当時は著作権についても今ほどうるさくなかった。アナログ・メディアはダビングを重ねると劣化するし、今のように手軽に新品と同じ状態でコピーできる、という代物ではなかったので。だからこそ消費者は少しでも音質を向上させようと必死でした。

カセットテープは品質のグレードごとに名前がついてましたよね。メタルとかハイポジとか、懐かしいなぁ。僕はSONYのメタルテープが欲しかったけど、質より量で、結局いつも一番安いノーマルテープを買ってました。3本298円とか、そんな感じだったかな。

「AXIAカセットテープのCM」

私はAXIAのスリムケース派でした。ただ、スリムケースだとラベルもカッコいい既成品がないのでカラー用紙を買って、ピッタリのサイズに切って好きなフォントのレタリングシートを大量に買っておいて、カセットラックに入れたときに文字の始まる位置を全部揃える!っていうくらい拘っていました。あの作業がデザイナーへの1歩でした!って言えるデザイナーになっていたらカッコいい話でしたね!笑。でも、日常生活で「作る」というすべてはココから始まっていますね!

90年代になると、レコードからCDへの移行を後追いするように、カセットテープの代替品としてMDというメディアが普及しました。若い人のために念のため補足しますが、手のひらサイズの正方形の薄いカートリッジに小さなCDのような光学メディア入っていて、ほとんどCDと同じような感覚で使えるものです。

CDの1/4ほどの大きさのMD

しかも当時のCDでは不可能だった録音やダビングができた。CDとカセットテープのいいとこ取りのメディアで、日本ではかなり流行りましたが、海外では今ひとつ浸透しなかったそうです。

音質でいうと、レコード > CD > MD > カセットテープという印象です。カセットテープは録音環境やメディアの品質によって音質にムラがあった。レコードファンには音質至上主義の人が多いけど、レコードも反りやカビなどで劣化しやすく、やはり安定して長く同じ品質を保つのは難しかった。そんなわけで、やはり不安定なアナログ媒体が消えて再現性に優れたデジタルのCDやMDに移行していったわけです。これはカメラや映像の世界でも同じでしたね。

カセットテープからMDに移行して便利になった点は何と言っても、ウォークマンがさらにコンパクトになったことですね。これで何枚でも持って行けるって気になりました。MDウォークマンとディスクマン(CDウォークマン)は同じ年(1992年)の発売だったんですね~。私は迷わず、MDウォークマンでした。ディスクマンは音はイイけど、当時はまだまだ音飛びの問題が解消されていなかったので。

音楽とファッション

僕は学生時代は関東で過ごしたので、CDを買うときには新宿、池袋、渋谷に出てタワーレコードやHMV、ディスク・ユニオンなどに行きましたが、大阪ではどんな店が流行っていましたか?

DEKI家のAV機器はSONY派だったようで、近所のSONYショップで全て揃えていたから、機器を購入したお客様はビデオやCDを全て無料でレンタルしてくれていたので、ヒマさえあればそこに行ってました。友達の家でもあったのでいつも最新のSONY商品に触れることができて、帰って親に営業していました。だから、大阪のCDショップはホントに知らないですね~。なにせバブルだったんですよ!町の小さな電気屋さんにも本社からソフトなどがジャンジャン送られてきてたんじゃないでしょうか?

それはまたずいぶん景気のいい話ですねぇ。僕の記憶では、当時は今よりも音楽がファッションやコミュニケーションと直結していて、例えばデートコースにHMVやタワーレコードが入っていることも自然だったような気がするのですが…。
先日、セレクトショップのBEAMSが40周年を記念してビデオを発表したんですけど、小沢健二の「今夜はブギーバック」を東京のファッションアイコンたちが歌い継いでいく、という内容で大きな話題になりました。

TOKYO CULTURE STORY by BEAMS「今夜はブギー・バック」

彼氏とCDショップはないですね~。どちらかといえば女友達との待ち合わせにすることが多かったです。ファッションがどうのって言ってる男の子に興味がなかったから、オシャレ男子は対岸の存在でした!笑。お互いが好きな音楽を持ち寄ってくるって感じでしたね。で、二人ともがいいなって思ったのだけを一緒にいるときに流すような感じかな、、古い話すぎて思い出せないです~。

90年代の半ばになるとパソコンが普及して、家庭でもCD-Rを使って簡単に音楽CDを複製できるようになった。これは衝撃的でした。僕はCDをコピーするためにパソコンを買ったようなもので、近所の図書館で借りてきたジャズやクラシックのCDを片っ端からダビングしていました。

このあたりから音楽は完全にアナログと決別して、「データ」となってそのフィールドをオーディオ機器からパソコンに移していくわけです。

黒船、iPod登場

Jet「iPod CM - Are you Gonna Be My Girl」

少し端折りますが、2000年代になるとAppleがiPodを出して、これが僕たちと音楽の関係を更にガラリと変えてしまった。持っている音楽が全部ポケットサイズのデバイスに入ってしまうわけだから、まず音楽を聴く環境が据え置きである必要がなくなり、音楽と家の関係が希薄になった。その前にもウォークマンがあったけど、それはあくまでも「家で聴く音楽を外に持ち出す自由」を楽しむデバイスでした。そこからは、車の中でも旅行中でも、どこにいても同じ音楽体験ができるようになった。

僕はまだ日本でiPodが発売される前にサンフランシスコで実物を見ましたが、その時は「こんなものは絶対に売れない」と思いました。音楽が家のような「場所」と切り離されることがイメージできなかったんです。見事に外れましたね、僕の浅はかな予想は…。

私は「iPodの時代がやってきたー!!」と騒がれても、やっぱりSONYでしたね。試聴しても音の質がどうかとかはわからないにしても、耳がSONYの音を正解にしまっている気がしました。でも10年以上が過ぎて、長いモノに捲かれるようにしてiPod touchを購入したら、それぞれに良いところがあって、とってもうまく使い分けしています(多分)。内蔵ソフトも年々どこのメーカーも簡単で使いやすくなりましたね。

最新のウォークマンと第2世代のiPod

iPodは使ってみるととても便利で、先程言ったとおり我々の音楽体験の可能性を大きく広げてくれました。ただ、その影でひとつ大切なものを失ったと思っています。それはコミュニケーションです。主に著作権を保護する目的でiPodどうしでの音楽ファイルのやり取りが制御されていて、カセットテープ時代には常識だった「この曲いいよ!」「私にもちょうだい」というコミュニケーションが成立しなくなってしまった。だから、音楽はiPodの中で孤立してしまったんです。

もちろんそこには色々と大人の事情があって、要するにハリウッドのように政治に擦り寄ってロビー活動をすることを拒んだ音楽業界は、自らのやり方で自分たちのコンテンツを護らなくてはいけなかった。だからAppleなどにも圧力をかけて、どんどん窮屈になっていったんです。そのあたりの話はスティーヴン ウィットの『誰が音楽をタダにした?』という本に詳しく書かれていて、音楽業界の斜陽を紐解く良書です。

そんな風にして、テレビの音楽番組が減り、CDの売上が落ち、誰もが知っているヒット曲が少なくなったのもこの時代で、僕にはiPodの普及と無関係とは思えません。街から音楽の話題が消えてしまった。

たしかに、最近では友だちと会ったときに音楽の話題になることは少なくなりました。(年代のせいもありますね)どんな曲が流行っているのかあんまりわからないし、そういうことにiPodが関係していたなんて…、音楽を聴く環境の変化って、ただ単に機械やメーカーが変わるだけではなくて、私たちのライフスタイルにも深い関わりがあるんですね。

みんなで共有する音楽が減っていく事で、コレという時代のシンボルをなくしてしまい、音楽への関心が分散してしまった。カセットテープなんて、各社競ってビックリするくらいの頻度でCMをしていたから、自然に流行を耳にして時代を捉えることができていたんでしょうね。音楽だけでは時代が見えなくなってきましたね。

ちょうど1年ぐらい前だったかな、Globeのアルバムのプロモーションでバス停にポスターが貼られていたんです。そこには宣伝文句として「Face」という曲の歌詞から「バス停でおしゃべりしている学生 明日の事は考えて もちろんいるけど」「鏡に映ったあなたと2人 情けないようでたくましくもある」という箇所が抜粋されていました。バス停の広告スペースがガラス張りなので、立ち止まってこのポスターを見ることで、そこにお喋りしている学生が写っていたり、そこに写った自分たちの姿を見たりすることになるわけです。その姿が曲の歌詞とシンクロして…とてもウィットに富んだ広告でした。


globe「FACE」

僕はこれを見てちょっとぐっと来るものがありまして、こんな風に街と音楽が繋がっていると感じられたのはいつぶりだろう…と思いました。
イタリア人がサッカーの話をするように、アメリカ人が野球の話をするように、街のあちこちでみんなが音楽の話をするようになってほしいと、僕は常々思っています。日本は国内需要だけで音楽産業が機能する非常に珍しい国なんです。実は音楽大国なんですよ。

音楽は枠組みを超えて「聴き手のもの」になった

ちあきなおみ「喝采」

その反面、逆に音楽がどんどん自由になっているように感じることもありますよ。以前はお兄ちゃんやお姉ちゃんのいる人じゃないと上の世代の音楽を聴く機会ってほとんどなかったけど、今はYouTubeでクラシックも昭和歌謡もAKBもゴチャまぜに聴けるじゃないですか。だから、最近も20代の知り合いの子が「ちあきなおみの『喝采』っていい曲ですね!今、1番聴いてます。」なんて言ってるのを聞いて、おー、これが新しい音楽の聴き方かぁ!なんて思いました。

なるほど、それは頼もしい。LPやCDの時代は売り手の都合で音楽が世代別にレイヤ分けされていたということですね。確かに一昔前までは、、アルバムとかジャンルとか世代とか、音楽が枠組みの中だけで聴かれていてたという感じがあったと思います。

パッケージ化された商品を売るためには、売り手にとっても買い手にとってもその方がわかりやすいですからね。でもそういう仕掛けのようなものがなくなったからと言って、音楽そのものが聴かれなくなったわけではなくて、むしろ聴き手の側に近づいてきた、って考えられませんか?

レコード会社の人にとっては耳の痛い話かもしれませんが…まさにそのとおりだと思います。そのぶん誰もが口ずさめるようなヒット曲は生まれにくくなった。ある意味で今こそ音楽の真価が問われる時代なのかもしれません。

新しい音楽の聴き方

私は最近SONYの新しいWALKMANとBluetoothのヘッドホンを買ったんです。クラシックをハイレゾ(編集部注:ハイ・レゾリューションの略。高精細に記録された高音質の音楽データのこと)で聴いてみたい!と思って。ヘッドホン自体もノイズ・キャンセリング機能とかものすごく進化していて、今まで体験したことがないような音楽への没入感です。同じ曲なのに全然違う!コーラスもキレイで拾える音がまだまだこんなにあったんだ!って感じですよ。
アベさんも音質には相当こだわってるんじゃないですか?

いや、僕は実は音質には無頓着でして、イヤホンもiPhoneに付いてきたものを使っているし、車のステレオも壊れているのでiPhoneをクリップで挟んで音楽を流しているぐらいです…。
デキさんは音楽に関してはかなり硬派ですよね。しっかり自分の聴き方を持っている、といった印象です。

イヤ、全然ですよ、、。でも音楽が元気だった時代を知っているからちょっとコダワリはある方かもしれませんね。それと、ピアノ教室を運営しているので(編集部注:大阪谷町六丁目のcarbonピアノ教室)、音楽のことは聴くのも演奏するのも常に一番いい状態で!という気持ちもあると思います。

ピアノがナカナカ上達しなかった子がいて、その子の家ではお母さんがクラッシックをよく聴かれていたそうで、ショパンがどうって話をいつもするんです。その子が演奏するコツを掴んだらメキメキ上達して、ある瞬間に弾いた曲がホントに誰よりもキレイな演奏で泣いてしまいました。知らず知らずのうちに耳を養って、自分の作る「音」がちゃんとできているように思いました。

carbonのピアノ教室で育った子どもたちが将来どんな風に音楽に携わっていくか、楽しみです。
これからはおそらくApple MusicやSpottifyのようなサブスクリプション・サービス(編集部注:定額で音楽が聴き放題のサービス)が主流になり、僕たちと音楽との関わり方はますます変わっていくだろうと思います。例えばニューヨークでは洋服屋さんにレコードを扱うコーナーがあったり、コンサート会場でその日の演奏をCDで買って帰れたりと、今までにはなかったような楽しみ方が生まれるといいですね。

フクダ・ロングライフデザインの家で聴きたい音楽

最後に、フクダ・ロングライフデザインの家で聴きたい音楽のプレイリストを作りましょうか。フクダ・ロングライフデザインの家の特徴はどんなところでしょうか?

フクダ・ロングライフデザインの「place | プレイス」

光と風をキモチよく感じるコトができる空間です。ちょうど先日里山住宅博の「place|プレイス」の一般公開が終わりましたけど、自然に囲まれて本当に心地よい家でした。

それではアルバム1枚分ぐらい選びましょう。
3回に渡ってお届けしてきた『暮らしと音楽』は今回で最終回です。ありがとうございました。

とっても楽しかったデス!ありがとうございました。アベさんは普段から8割が音楽の話ばかりしているので、いつも「どっかの誰かにとってはスゴく楽しくて興味深い話なんだろうな、、もったいないな~」って思っていて、でもココでその才能を発揮して皆様に聞いていただく事ができて嬉しかったです。

音楽もルーツを辿ればどこまでも続いていって、ずっとずっと先までいくと最後はきっと雨の音や風の音になるんかな~なんて、思ったりしました。笑!

フクダ・ロングライフデザインの家で聴きたい音楽

光と風をキモチよく感じるコトができる家「place|プレイス」

#01

Heartbeats

José González

#02

Norwegian Wood

The Beatles

#03

Friday I’m In Love

Yo La Tengo

#04

Rainbow River

Vashti Bunyan

#05

Tracking Elevatory

トクマルシューゴ

#06

風をあつめて

はっぴいえんど

#07

家族の風景

ハナレグミ

#08

Goldberg Variations (1965)

Glenn Gould

#09

Emily

Bill Evans

#10

Journey Through The Past

Neil Young

#11

田舎の生活

スピッツ

#12

I Will

The Beatles

今回紹介した音楽(+関連商品)

音楽の聴き方の変化の中で…

宇宙図書館(初回限定盤)(DVD付)

宇宙図書館
松任谷由実

3年ぶり、38作目のアルバム。何歳になってもユーミンは女子のたしなみとして、必須アイテムですね!

Junior Sweet <Remaster>

Junior Sweet
Chara

デビュー20周年を記念してリマスターされた1997年の傑作アルバム。「やさしい気持ち」や「ミルク」などヒット曲を多数収録。

DANCE TO YOU

DANCE TO YOU
サニーデイ・サービス

サニーデイ・サービスの新境地。キャリア最高傑作にして、シティ・ポップの金字塔が誕生しました!

Veneer

Veneer
Jose Gonzalez

サン・フランシスコの坂道を数万のスーパーボールが跳ねてゆくBraviaのCMで一躍有名になった「Heartbeat」を収録。

レモネード(DVD付)

Beyonce
Lemonade

グラミー賞にもノミネートされたビヨンセの新作。前作同様全曲映像とセットで聴かせるビジュアルバム。

PUBERTY 2

Puberty 2
Mitski

2016年、最も音楽業界の注目を集めたNYのシンガーソングライター、Mitskiのアルバム。2017年に大ブレイクの兆しです!

Fantôme

Fantôme
宇多田ヒカル

8年ぶりに復帰した宇多田ヒカルが発表したアルバム。「花束を君に」「真夏の通り雨」など、テレビでおなじみの曲も収録。

パワー・トゥ・ザ・ピープル(エクスペリエンス・エディション)

POWER TO THE PEOPLE
John Lennon

「Happy Christmas – War is over」をはじめ、「Imagin」や「(Just Like) Starting Over」などジョン・レノンのヒット曲を多数収録。

humansystem

Human System
TM NETWORK

1987年に発表されたTM NETWORK大ブレイク前夜の傑作アルバム。「Be Together」や「Kiss You」などを収録。

Nothing To Lose

Nothing To Lose
REBECCA

収録曲数が6曲と少ないものの、ファンの間では評価が高く、初期レベッカの勢いのあるロックンロールを楽しめるセカンド・アルバム。

Amadana Music UIZZ-18520 レコードプレーヤー SIBRECO

レコードプレーヤー SIBRECO
Amadana

デザイン家電のAmadanaとレコード会社のUNIVERSAL MUSIC JAPANの共同開発した、SNS世代のためのレコード・プレーヤー。

誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち【無料拡大お試し版】 (早川書房)

誰が音楽をタダにした?
Stephen Witt

CD工場で音楽を盗む労働者、mp3技術の開発者、大手レコード会社のCEO…。音楽業界の闇の歴史を暴くノンフィクション。

ソニー SONY ウォークマン Aシリーズ ハイレゾ対応 16GB NW-A35 BM チャコールブラック

NW-A35
SONY

CDを超える高音質「ハイレゾ」再生に対応したウォークマン。SONYが培った技術の結集で、音質、操作性ともに最高峰の音楽プレーヤー。

ソニー SONY ワイヤレスヘッドホン ノイズキャンセリング MDR-1000X CM グレーベージュ

MDR-1000X
SONY

ノイズキャンセリング機能を搭載したBluetoothヘッドホン。ワイヤレスでもハイレゾ相当の高音質を楽しめます!

三嶋さつき ピアノポスター by carbon 限定販売

暮らしと音楽

1

10月4日公開

家で聴く音楽

KAMAKULANI1周年記念特別企画。芸術の秋、いつもとは少し違った視点を持って音楽を聴こう!音楽も家具のようにインテリアの一部と考え、家の中のそれぞれの空間に適した音楽を選んでみましょう。

2

11月8日公開

旅先で聴く音楽

旅先のホテルや空港で、どんな音楽を聴きたくなりますか?旅の途中で出合う音楽には、そこでしか感じられないものや体験できないことが、たくさん詰まっています。この秋、旅を楽しむための音楽をKAMAKULANIがオススメします。

3

12月13日公開

音楽を聴く環境

レコード、カセットテープ、MD、CD、MP3、音楽のフォーマットの変化に合わせて、私たちの音楽を聴く環境も変化してきました。今、私たちが本当に聴きたいのは、どんな音楽でしょう?KAMAKULANIが辿る音楽の温故知新。最終回!